生涯学習愛媛 bS4(平成11年11月発行)
愛媛学だより

平成10年度 地域文化調査「愛媛のくらし」から
盆の民俗

   平成10年度の調査対象には、伝統的な生活様式や年中行事、通過儀礼、地域共同組織など民俗学の研究領域とも重なるものが多く含まれていた。
 愛媛の民俗の中には、地域性が認められるものがある。盆行事のいくつかもその例であろう。例えば、サイト、マンドなどと呼ばれている盆の火祭りは越智郡、周桑郡地方に多く見られ、子供たちが川原や浜辺でくどを築き、煮炊きをする盆飯の風習は、南予地域一帯に見られた盆習俗であった。仏を供養する盆棚にも地域によって差違がある。
 越智郡朝倉村の武田瀬市さん宅では「ソウリョウダナ」を家の軒下に設ける。「ソウリョウダナ」とは精霊棚の意味であろうが、本来は無縁仏を供養する施餓鬼棚のことである。棚の下には5枚の施餓鬼札をつけ、棚には「迷い仏さんも御先祖さんもこれに乗っておいでください。(瀬市さんの妻アキヨさん談)」という気持ちで、割りばしで4本の足をつけて牛や馬に見たてたナスやキュウリなども供えるという。仏壇の位牌はそのままにしておき、特別の祭壇など設けることはしないが、「にぎりだんご(おはぎに似ている。)」と呼ばれているだんごを供えるのが習わしとなっている。
 一方、上浮穴郡小田町の岩岡義一さん宅では仏壇の前にバショウの葉を敷いた「お棚(精霊棚)」を設け、青笹、ハギ、フロウマメで飾り、位牌を安置する。長いさやのフロウマメは、先祖が供え物を背負ってあの世に帰る折のひもになるものだと言い伝えられている。8月15日には「送りだんご」とうどんを供える。「このうどんも御先祖様があの世に帰られるときに使用されるひも(フロウマメの言い伝えに同じ)になるのだから必ずお供えするようにと主人の母から教えられました。」と義一さんの妻の桂子さんは語っている。
 「お盆には子供や孫たちが帰って来てにぎやかになります。お盆は、先祖供養を通して今は亡き人との心のつながりを大切にするときだと思いますが、同時に同じ先祖につながる家族や親類の心のきずなを確かめ合うときだとも思っています。」と義一さんは語っていたが、今年の盆も駅や空港は、帰省客であふれていた。故郷で家族や親族とのきずなを確かめ合った人々も多かったことであろう。この帰省現象も言ってみれば現代の盆の民俗の一つなのかもしれない。

  ▲朝倉村 武田さん宅の盆棚
  ▲小田町 岩岡さん宅の盆棚

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