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わがふるさとと愛媛学Ⅱ ~平成6年度 愛媛学セミナー集録~

◇「地域の個性」を見つめる愛媛学

松井
 松井です。どうぞよろしくお願いします。まず、地元の私のほうから、口火を切らせていただきます。
 先程、センターの所長さんや久万町長さんから、「地域の個性、地域の良さを見直そう。地域について考えてみよう。」という話がありました。この愛媛学セミナーのねらいは、もうその一言に尽きるわけですが、私は、ちょっと別のほうから、愛媛学について考えてみたいと思います。
 今年は、女子学生の就職が非常に難しい状況で、私の研究室にも、学生が就職のことでよく相談に来ます。その際一番困るのが、職種があいまいで漠然と就職したいという学生です。それで、「君は、どんな仕事に就きたいのか。」と尋ねても、自分の長所・適性がわからないので、自分を生かせる仕事が答えられない。結局、給料とか、休みの日とかで決めているようです。
 そのような学生の多くは、小学校、中学校、高校、大学と、自分の進路を深く考えることなく、周りの変化に合わせて自分も変化してきたのでしょう。ところが、いざ就職する段になって、「自分は社会に対してどういう役割が果たせるのか。」が問われ、初めて本当の自分らしさ、つまり「自分の個性」を考え始めたのです。しかし、今まで「自分らしさ」「自分の個性」を自覚する機会もなかったことは、非常に怖いことだと思います。
 「地域の個性」についても、同じようなことが言えると思います。地域の個性、地域のアイデンティティも、いやがおうでも変化していきます。その中で、時間がたっても変わらないもの、久万なら「久万らしさ」を、しっかりと認識していかなければ、久万の個性というものが、将来本当になくなってしまうだろう。
 久万町には、38381という市町村コードがついていますが、そんなコード番号ではなく、固有名詞の「久万」と呼ばれるためには、「久万らしさ」を絶対に失ってはいけない。その「久万らしさ」を見つめなおそうというのが、愛媛学の趣旨だと思います。
 実は、愛媛学という名前は非常に好きでして、私の学校の一般教育科目に「地域文化論」がありましたが、これを「愛媛学」という名前に変えたらどうかと、会議で提案したことがあります。他の教員の聞きなじみがなかったのか、結局それはだめでしたが。
 おそらく、多くの方が、「愛媛学?何だろう、よくわからない。」と思われているかも知れません。どうも実態がないものなんですが、結局は、「自分の住んでいる地域の個性を考える。」ということに尽きると思います。