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わがふるさとと愛媛学Ⅱ ~平成6年度 愛媛学セミナー集録~

◇明日の上浮穴のくらしを考える

 これからの上浮穴はどうするかということ、僕は、都市と農村の交流によって、なんとか活性化できないものだろうかと、真剣に考えているんです。滞在型のクラインガルデン、そういう農園を作って、都会の人たち、定年で暇になった方とか、また若い人に土曜日、日曜日にかけて車で来ていただく。農業も楽しんでもらうとなれば、無農薬栽培なんかも十分できるんだと思います。
 久万町も、もう何年かで、町全体の集落排水が出来上がります。川も美しく、昔のように戻ることと思います。農村の生活は、皆が助け合って生活しております。1本の道も林道も農道も、そして1本の水路も、皆が関係しているわけです。それでお互いが協力し合わなければいけない仕組みに、農村というのはなっているんです。人の優しさとか、人情深さも、今はまだ農村にはいっぱい残っております。農業、農村は変わっていっても、農村の自然と人の心は、絶対に変えたくないと思っております。
 自然を愛し、土を大切にすれば、自然は潤いを与えてくれます。「土は無限の富を生む。」ということを、私はいつも言っているんですが、これは農業者にしかわからない言葉だと思います。土は、作物(お金)だけではなく、心の富も含めて与えてくれます。
 そして、「落花に注ぐ涙あり。」という言葉があります。これは私の農士学校の校歌なんですが、落ちる花にも涙を流すような人であれば、必ずや素晴らしい自然との共生ができるのではないかと思います。
 もう一つ大きいことを言わせてもらいますと、日本の民族に、こうした農村を、また次の時代にこうしたふるさとを残し続けたいものです。民族の生命も、醇風美俗(じゅんぷうびぞく)と申しますか、人情とか素朴さとか、つつましさとかいうものが、農村によって保たれているのだという誇りを持ちたいと思います。