データベース『えひめの記憶』
身近な「地域のたからもの」発見-県民のための地域学入門-(平成22年度)
(2)調査の事前準備
ア テーマについての情報を集める
調査テーマが決まったら、すぐに調査にかかりたいところですが、テーマについて何も知らないまま調査を実施することはおすすめできません。本格的な調査を行う前に、調査テーマについての下調べをする必要があります。調査テーマに関連する文献や研究報告書を調べて、テーマに関する情報を得ることが大切です。
情報の集め方としては、図書館などで関連のある書籍や雑誌を読んだり、各種統計書を見たり、インターネットで関連情報を検索するなどの方法があります。テーマについての情報を集めることで、自分のテーマを掘り下げることができます。その際、疑問に思ったことや気になることは必ずメモをしておきます。
前述の「地域の養蚕・製糸業について」というテーマを設定したAさんは、インターネットの検索エンジンを利用し、「養蚕」「製糸」「生糸」などのキーワードを入力して、養蚕・製糸業についての基本的な情報を集め、図書館で養蚕・製糸業について書かれた本を読んで、次のようなことを知りました。
○ 養蚕は、蚕(かいこ)(カイコガ科のガの幼虫)を飼うための桑を栽培し、蚕から繭(まゆ)を作る。繭は製糸工場で
生糸(きいと)へと加工される。
○ 生糸は、明治以来長く、我が国の輸出品の第1位を占め、外貨獲得に大きな役割を果たし、日本の近代化と富国強
兵に寄与した。
○ 我が国の養蚕・製糸業は、戦後になってナイロンなどの化学繊維が登場したことや、中国・韓国産生糸との競争に
敗れたことなどで衰退した。
イ 調査項目の決定
テーマについての下調べが終わると、「○○を知るには何を調べればよいのか。」「△△を調べることで何がわかるか。」ということを具体的に考えて整理しながら、次は、実際に何を調査しなければならないのか、すなわち調査項目を決定していきます。
Aさんは、次のような調査項目を考えました。
○ いつから、愛媛県内で養蚕・製糸が行われたか。
○ 県内の養蚕・製糸業が盛んになったのはいつごろからか。
○ 県内の養蚕・製糸業が衰退したのはいつごろからか。
○ 県内の養蚕・製糸業はなぜ衰退したのか。
○ いつから地域の桑畑がミカン畑へと変わったのか。
○ なぜ、桑畑からミカン畑へ変わったのか。
ウ 調査方法の決定
地域調査の方法には、文献調査や現地調査、博物館・資料館での調査、聞き取り調査、地図や写真の収集、集めた諸資料を地図化したりグラフにしたり年表にしたりする作業など、調査テーマに応じた様々な方法があります。一つの調査方法だけで地域調査が完了することはほとんどなく、いくつかの調査方法を組み合わせて実施することが一般的です。調査項目ごとに、どのような調査方法が適切かを考えて、計画を立てることが大切です。
Aさんは、次のような調査方法を考えました。
○ 文献で愛媛県の養蚕・製糸業について調べる。
○ 地域の古い地形図(八幡浜)と新しい地形図(八幡浜)を比較する。
○ 養蚕・製糸業に関する統計とミカンに関する統計を調べる。
○ 養蚕・製糸業に従事した経験のある人から聞き取りを行う。
○ 野村シルク博物館や地元の郷土博物館を見学する。
エ 調査計画を立てる
調査項目に沿って、いつ、どこで、どのような調査をするのか、調査計画を立てながら、見通しをもって調査を行うようにします。実際の調査では、思わぬ出来事が起こったりもしますが冷静に対応し、その都度、計画を修正するようにしましょう。
Aさんは、夏休みを利用して地域調査を行おうと、次のように調査計画を立てました。
〇 7月22日:八幡浜市立保内図書館で文献調査
〇 7月25日:八幡浜市立保内図書館で新旧地形図の比較
〇 7月30日:愛媛県立図書館で統計調査
〇 8月5日:西予市の野村シルク博物館を見学、聞き取り調査
〇 8月10日:八幡浜市内で聞き取り調査
〇 8月11日:レポート作成開始
〇 8月20日:レポートの完成