データベース『えひめの記憶』
臨海都市圏の生活文化(平成7年度)
(2)愛媛内航海運の現状
伊予水軍の伝統を基に発展してきた明治時代以降の愛媛県の海運業(以下、「愛媛海運」とよぶ。)の歩みは、大きく分けると、明治時代から大正時代の帆船時代、昭和初期から昭和20年代の機帆船時代、昭和30年代からの鋼船時代、昭和40年前後からの近海船、昭和50年前後からの遠洋船による外航海運時代と、四つの時期に区分することができる。
愛媛の内航海運は、戦後の高度経済成長とともに発展し、「愛媛海運おそるべし」と言われるほど、全国的に海運県の名をとどろかせてきた。今日における愛媛内航海運の基本的な特色は、愛媛内航海運組合連合会の資料(平成7年度)によると次のとおりである。
① 全国の内航海運業における愛媛県のシェアをみると、内航海運事業者は746業者で、全国の10.9%を占めている。ま
た、事業者は、「オーナー」とよばれる船舶貸渡事業者が中心で、全国の14.3%を占めている(図表1-1-2参照)。
② 愛媛の船腹量は、953隻564,022総トン(*4)で、全国隻数の10.7%、全国総トンの14.1%にあたる高い位置を占めてい
る。特に、油送船と特殊タンク船の全国シェアは、それぞれ22.4%、22.1%と高い(図表1-1-3参照)。また、平均トン
数も全国平均よりも大きく、船舶の大型化が進んでいることがわかる。
③ 愛媛のオーナーの所有隻数は、1隻所有が68.8%を占め、いわゆる「一杯船主」が圧倒的に多い(図表1-1-5参照)。し
かし、一杯船主は家族中心の零細経営で、低収益と後継者不足のため、漸次減少してきているのが実状である。
④ 貨物船の積荷別構成を船腹量(重量トン(*5))でみると、鉄鋼が35.8%ともっとも高い比率を占め、砂・砂利・石材・
雑貨・紙・パルプなどが続いている。10年前と比べると石灰石や石炭が減ってきている。また、鋼材の比率が高く、増加
傾向にあるため、愛媛の内航海運は鋼材の市況に影響されやすいといえよう。
⑤ 愛媛海運は、愛媛県内、地元の金融機関や造船所と結び付き、相互の信頼関係のもとに船舶を建造して発展してきた。平
成6年度における県下の主要建造造船所は、山中造船(波方町、56隻)、伯方造船(伯方(はかた)町、47隻)、村上秀造
船(伯方町、33隻)などである。
⑥ 愛媛の内航海運の中心は、今治地区(今治市、越智郡)で、船腹量は愛媛県の6割を占めている。なかでも、貨物船は、
波方町が県内シェアの28.6%と高く、油送船では、伯方町、松山地区、南予地区のシェアが高いことが注目される。特
に、松山地区のタンカーは大型で複数所有の船主が多い。
*4:船の大きさを表すための指標。船の容積をもとに算出する。特にことわりなくトンといえば、総トン数を表すのが一般的
である(本書でも、以下特別な場合を除いて単に「トン」と表記する。)。G/T(Gross Tonnage)と略記されることも
ある。
*5:船に積載しうる最大重量を表す数字。積載(積み)トンともいい、貨物船関係に用いられる。D/W(Dead Weight
Tonnage)と略記されることもある。
図表1-1-2 内航海運事業者数(愛媛県) (注)届出事業者とは、総トン数100トン未満であって、長さ30m未満の船舶により内航運送業又は内航船舶貸渡業を営む事業者をいう。平成6年3月31日現在。『四国運輸局業務要覧(②)』より作成。 |
図表1-1-3 船種別内航船腹量 平成6年3月31日現在。『四国運輸局業務要覧(②)』より作成。 |
図表1-1-5 愛媛県内の船舶貸渡隻数別オーナー構成比(%) 愛媛県内航海運組合連合会資料より作成。 |