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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

3 椀船に乗って(吉海町椋名漆器行商)

 越智郡吉海(よしうみ)町の椋名(むくな)集落は、かつて「椀船(わんぶね)」行商で有名であった。「椀船」とは船による漆器行商のことであり、瀬戸内海及び九州一円に販路を持ち商売を行った。漆器行商は、今治市桜井がその中心であり、行商から発達した月賦販売発祥の地として、また数多くの商人を輩出したことで、全国にその名が知られている。桜井の漆器行商及び月賦販売の発達については、すでに多くの論文・著書があるが、本項では、桜井とほぼ同時期に始まり昭和初期まで続いた、椋名の椀船行商に焦点を絞って記述を進めていきたい。また昭和に入ってからの行商方法の変遷とその消滅までをたどることで、行商者に留まらず、広く一般の人々の生活様式の変化についても考えてみたい。