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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(2)島々の歴史・民俗文化遺産の継承と活性化

 ア 島々の文化遺産の継承

 今日、島々に伝わる有形・無形文化財、民俗文化財、記念物は、大山祇神社に所蔵されている数々の国宝・国指定重要文化財をはじめとして、枚挙にいとまがないほど豊富であり、貴重な文化遺産として島々の大切な観光文化資源の役割を果たしている。これらの多彩な文化遺産は、島々に生きた人たちの姿を反映するとともに、島々の歴史的特質を生き生きと物語っている。
 これらの文化財や記念物は、島々における所有者をはじめ関係行政機関、保存会などを中心にそれぞれの地域が一体となって厚く保護継承されている。大三島の大山祇神社国宝館、海事博物館、大三島町歴史民俗資料館、上浦町歴史民俗資料館、宮窪町水軍資料館、岩城村岩城郷土館などの各種文化財施設は、島々の歴史民俗文化を伝える宝庫として豊かな島々の歩みと姿を、深々と実感させる場となっている。
 特に、鹿島の櫂練(かいね)り、興居島の船踊(ふなおど)り(いずれも県指定無形民俗文化財)をはじめ、岡村島の弓祈禱、中島の船踊りなど島に伝わる年中行事の代表となっている民俗文化財は、伊予水軍の伝統や海人たちの姿を鮮やかに再現するとともに海に生きた人々の歴史的な特質を豊かに反映させている。

 イ 文化遺産の活性化

 平成3年4月1日、愛媛県は全国初の「生活文化県宣言」を行い、暮らしの中に文化が息づく愛媛づくりに取り組むことを宣言した。その前文において、「瀬戸の海は、寛(ゆるや)かで広い。石鎚の山は、凛(りん)として高い。瀬戸の海原は、愛媛の豊饒(ほうじょう)を象徴する。石鎚の高みは、伊予の創造を象徴する。」と、愛媛の風土を調べ高くうたっている。
 愛媛県ではすでに、平成2年11月、「生活文化県政 プラン21」の基本方針を発表し、諸施策を展開している。その一つとして、「えひめ瀬戸内リゾート開発構想」を示し、越智大島地区、越智伯方島地区、大三島地区を「架橋・国宝のリフレッシュアイランドゾーン」、上島諸島地区を「島体験レクリエーションゾーン」と位置づけ、具体的な施策を提案している。
 また、昭和57年以来、西瀬戸経済圏構想が愛媛県を中心に関係5県によって提唱され「西瀬戸は一つ」の合言葉のもと、新しい瀬戸内海時代を迎えている。
 島々にとっても瀬戸内海各地域との縁(えにし)と絆(きずな)がいかに深いものであるかは明白である。愛媛を中心として、四国、山陽地方、九州地方の瀬戸内海各地域における生活文化の営みを高め連帯し合う中で、豊かな歴史と伝統に基づく島々の文化遺産の活性化が図られよう。
 以上、島々の歴史的特質について、海に生きた人々と海上交通の発達を中心に大筋を展望してきた。その特質をまとめて言えば、島々の人たちが歴史の黎明期から今日に至るまでの瀬戸内海全域を舞台として積極的に海に乗り出し、海を切り開き活用したことにある。島々がわが国の東西を結ぶ瀬戸内海の大動脈の中継点として「かけ橋」の役割を果たしてきたのは、島々の人たちが、いつの時代にあっても母なる島の生活にバイタリティあふれるイノベーション(変革)の姿勢を持ち続けたからにほかならない。