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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(1)台(うてな)ダムの完成

 慢性的な水不足に悩まされてきた越智諸島(芸予諸島)に、治水・利水の目的ダムとして台ダムが完成し、平成4年3月19日に完工・落成式が行われた。大三島・伯方島・大島の3島4町に水の供給を約束する世紀の大事業である。
 越智諸島上水道企業団によると、台ダムが建設された台本川(うてなほんがわ)は、これまで何度となく出水被害と干ばつによる水不足を繰り返してきたという。
 この川は、大三島町の鷲ヶ頭(わしがとう)山(436.5m)に源を発し、大三島町台地先を貫流して瀬戸内海に注ぐ、流域面積6.7km²、流路延長3.7kmの2級河川である。急流のうえ、下流平坦部は河床が堤内地より高い天井川のために、古くからたびたび出水の被害をもたらし、災害復旧工事を繰り返している未改修河川であった(「台ダムの概要(⑦)」より)。
 「洪水による台地区のはん濫(らん)はひどいもので、田畑の流失ばかりでなく、民家も押し流されました。それを恐れて、水位が上がると、川底の上砂を揺(ゆ)すって(くわを入れて、水の勢いで土砂を流す)はん濫を防いだものです。」と**さん(70歳)は当時を語った。上流から流れてくる土砂の量は大変なものであったようだ(瀬掘り)。
 暴れ者の台本川ではあるが、住民にとっては、掛け替えのない水源であり、飲料水も耕地を潤すかんがい用水も、この川に頼らざるを得なかった。
 一方、大三島・伯方島及び大島等の越智諸島部は、地形的な制約から、毎年深刻な水不足に悩まされ、特に昭和53年の干ばつでは、水道施設の大部分が断水又は給水制限を余儀なくされている。
 「水は生命の次に大切なものです。台ダムの完成は、島に住む人間にとって、まさに神の福音(ふくいん)なんです。」と言う**さんの声には、人々の喜びと感謝がこめられている。
 台ダムは、堤高42m、堤長225mの重力式コンクリートダムで、総貯水量は179万m³、一日最大6,000m³の水道用水を供給するほか、水田25haのかんがい用水をまかなう。
 昨年10月に本体が完成し、湛水試験やダム湖周辺の公園整備が進められていたが、山あいに広がる真っ青なダム湖と広々とした公園は、ドライブより散策のコースである。大山祇神社を訪れる観光客にとって、また一つ新しい名勝が加わり、人気を呼ぶことは間違いない。
 給水は、平成4年7月から大三島・上浦・宮窪・伯方の4町の一部で始まり、平成5年度末までに、ほぼ全域の給水を実現したいと企業団では言っている。