データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(3)友愛の水

 「広島県から上島三ヵ町村(弓削町、生名村、岩城村)に対する『友愛の水』ともいえる分水が決定されまして……上島地区住民が久しく希求してまいりました生活用水の安定確保へむけて……上島地区の歴史の一頁に大いなる喜びをもって意義深く刻まれるもの……。」
 「友愛の水」通水記念(昭和60年7月)リーフレットの冒頭に見られる上島上水道企業団企業長(弓削町長)のあいさつの言葉である。昭和57年9月、愛媛・広島両県知事による基本協定調印式にはじまる上島上水道企業団が施設整備事業の主要施設完成・一部通水を迎えた、記念すべきあいさつである。
 これは、広島県三原市からの浄水を主水源として岩城島・生名島・佐島・弓削島の4島に対して生活用水を供給するもの。一部給水開始時で一日最大1,000t、事業の完成する平成元年度からは弓削町・岩城村の簡易水道を統廃合し、漸次増量しつつ、計画目標年度の平成7年度から計画給水人口11,885人に対し、一日最大4,754tを給水する計画である。
 広島県沼田川水道用水供給水道によって、椋梨(むくなし)ダムからの放流水を本郷で取水したあと沈澱処理され、さらに三原市にある宮浦浄水場で緩速ろ過・滅菌処理されたものを海底送水管で岩城島へ送り、小漕川沿いにある受水場で受け入れたあと、加圧して積善山中腹の配水池へ送る。この配水池から岩城島内はもとより、生名島・佐島・弓削島の計画給水区域一円へ自然流下方式で配水されてくる。
 弓削町岳ノ下地区にある管理棟には、上島上水道企業団の事務所のほか、各島ごとの配水量や水圧、岩城島にある受水場・配水池の水位や水圧などのデータを集めるテレメー夕・電気計装設備を中央管理室に設置し、ここで生口島から弓削島に至る水の動きを集中管理できるようになっている。
 国・県の補助を受けた昭和58年度から63年度までの6か年継続事業で、予定総事業費50億円の「世紀の大事業」ともいえる上島広域簡易水道事業であり、これにより、各町村がこれまで独自に講じてきた海水淡水化・小規模ダムの建設・島外からの買水などが一挙に解決されるに至った。