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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(1)雨が少なく温暖な瀬戸内海気候

 愛媛のミカンどころとして知られる芸予諸島・忽那諸島の島々は、年間を通しての平均気温が15~16℃と暖かく、海洋性気候の影響を受け冬でも0℃以下に下がることが少ない。年間降水量は1,100~1,300mm程度と雨の少ない地帯に入り、干ばつ年の水不足は、人間生活においても、農業にあっても深刻な問題となる。とくに昭和42年(1967年)の大干ばつは、中島町で7月10日から10月5日にかけて全く雨のない炎天の日が続き、この年、中島町のみかん栽培面積1,442haのうち77.5%までが何らかの干害を受け、減収量は15,200tにも達した。越智郡の島々はもちろん、南予地域を含めて県下全体に及ぶ大被害の年となり、各地域で干害対策班が設置されて、その対応に追われた(⑧)。
 また、冬期の季節風も強く西風が主流となるが、各島の地形が複雑であるだけに、所によっては風向きが変わってくることもある。そこで、とくに風当たりの強い果樹園では、防風林設置などの対策が進められてきた。
 農作物の栽培と気候とは切っても切り離せない関係にあり、とくに温度や雨とのつながりが深い。かつて瀬戸内海一円に分布していた除虫菊の栽培も、この地方の気候が温暖で、冬でもそれほど冷え込まない気象条件が、除虫菊の花芽の分化を促して増収効果をもたらせ、しかも開花期の5~6月に雨の少ないことが、品質の保持や採収調整に大変便利であったことと結び付いている。
 現在島しょ部農業の柱となっている柑橘類の栽培においても、同様のことがうかがえる。年間の平均気温15~16℃という温帯性の気候は、柑橘類の栽培にとって適応範囲が広く、育てやすい条件下にある。とくに最低気温が-4~-5℃をたびたび下回る地帯では、寒さによる被害が予測され適地とは言えない。この点瀬戸内海の気候は、柑橘の樹体に直接被害を与えるほどの寒波もほとんど例がないので、現在の柑橘専作型農業が成り立っている。
 このように瀬戸内海の気象条件は、その温暖な気候がミカン類をはじめ、除虫菊・葉タバコなどの生育に好ましい環境となり、それぞれの作物の優れた産地の形成に結び付いていった。