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えひめ、人とモノの流れ(平成19年度)

1 広がる交流の輪

 県内では毎年各種のスポーツ競技大会や文化・文芸発表会が開催されている。それらの中には競技や内容を競い合うものばかりでなく、地域おこしや町づくりをめざして取り組まれているものも多い。また、自然や歴史といった豊かな地域資源を生かす取組にも県内外から多くの人々が訪れ、見聞を広げ、交流の輪を広げている。そういった取組の実数と交流人数はどのようになっているのだろうか。
 具体的な数字を把握する統計調査は実施されていないため、愛媛県が推計した『平成18年観光客数とその消費額』から人々の交流の状況を概観すると、平成18年に県内の様々な観光地及び観光施設、そして多彩な地域行事(祭事を含む)を訪れた県内外の観光客数は約2,348万9,000人である。このうち県外からの観光客は834万9,000人であった。県外からの観光客数はしまなみ海道が開通した平成11年以降は毎年800万人を超えて推移しており、平成17年国勢調査で報告された県の人口(約147万人)の5倍以上の観光客が毎年県内各地を訪れていることになる。
 また、平成18年の県内の観光客数(県内在住者が県内の観光施設などを訪れた人数)は1,514万人となっており、平成11年以降1,500~1,600万人前後で推移している(図表4-1-1参照)。
 県内各地を訪れた観光客の目的は様々だが、図表4-1-2によると最も多いのは買物である。そして、各種の競技大会やイベントを通じて人と人との交流が深まるようなスポーツレクレーションを目的とした割合が17.5%であり、イベントは7.1%となっている。また文化・歴史が15.0%、自然が10.0%となっており、県内のイベントや地域資源が多くの人々をひきつけ、そういう場で様々な交流の輪が広がっていると推測できる。
 交流の輪を広げる取組は枚挙に暇(いとま)がないが、近年、次の時代を支える若い世代の交流やその才能を伸ばそうとするイベントが数多く企画されてきている。
 例えば、スポーツイベントでは伊予(いよ)市で開催されている『マドンナカップ(ビーチバレージャパン女子ジュニア選手権大会)』がある。主催者は日本バレーボール協会や日本ビーチバレー連盟などで、全国のジュニアビーチバリァーが一堂に会して研鑚(けんさん)・団結・友情を深め、将来のオリンピック及びワールドツアーに出場できる選手の育成が目的である。11回目となる今年(平成19年)の大会には28府県から予選を勝ち抜いた44チーム(2人1組。愛媛県からは4チーム。)の選手がビーチバレーの女子高校生日本一をめざし4日間の日程で競い合った。
 また、文芸イベントでは松山青年会議所などが主催している『俳句甲子園(全国高等学校俳句選手権)』がある。同イベントは松山市が正岡子規をはじめ多くの俳人を輩出してきたことにあやかり、地元の俳句関係者とボランティアの協力の下、平成10年から開催されている。10回目となる今年は23都道府県から31校36チーム(5人1組)が俳都松山に集り、それぞれの思いを「五・七・五」の十七音にのせた俳句で披露(ひろう)している(写真4-1-2参照)。今ではこの大会が全国の高校生の文化的な相互交流の場となるだけでなく、俳句文学の興隆とその発信の場となっている。また、今回からは過去に俳句甲子園を経験した全国のOBやOG、そして俳句愛好者による「NPO法人俳句甲子園実行委員会」が組織され、新たな主催者として大会の準備運営の中心的役割に加わってきている。
 このほか、県内外の若い世代を取り込みながら実施されている取組として、スポーツイベントでは、大洲市主催の『大洲ジュニアトライアスロン大会(*1)』、また文芸イベントでは、今治青年会議所主催の『全国高校心の絵選手権(*2)』や今治ジャズタウン実行委員会主催の『今治ジャズ甲子園(*3)』などがある。
 一方、地域住民の地道な活動が地域を活性化させ、県内外の人々との交流へと発展していった取組も多い。例えば、新居浜市に本部を置く「日本のお手玉の会」主催の『全国お手玉遊び大会』がある。もともとは昭和63年に誕生した市民ボランティアグループ「新居浜アメニティー倶楽部(くらぶ)」が始めたお手玉の普及活動がきっかけでお手玉遊びによる交流が世代や地域を越えて広がり、平成4年には初の全国大会を開催している。平成18年に同市で開催された15回大会には、33都府県と米国(ロサンジェルス)から約1,300人が参加し、約5,000人の応援・見学者が訪れている。平成19年10月現在で、国内53、海外3の支部があり、お手玉を通した交流の輪は国内外に広がっている。このように県内では実に多彩な取組が展開され、多様な交流の輪が生まれているのである。


*1:大洲ジュニアトライアスロン大会 小学3年生から高校生までを対象に平成7年から開催され、今年で13回目。定員は
  小・中・高それぞれ各150名。肱川を水泳のコースに利用している。
*2:全国高校心の絵選手権 創作絵本をとおして自由な心の表現と交流をめざし平成15年から開催され、今年で5回目。毎回
  100点前後の作品が県内外から出展されている。
*3:今治ジャズ甲子園 今治ジャズタウン実行委員会がジャズ音楽による町の活性化をねらい今年の8月に初開催。県内3
  校、県外4校が参加し、大会翌日には市内で開催されているジャズイベントでも演奏を披露している。

図表4-1-1 観光客数の推移

図表4-1-1 観光客数の推移

愛媛県観光交流課提供資料から作成。

図表4-1-2 観光客の目的別内訳

図表4-1-2 観光客の目的別内訳

愛媛県観光交流課提供資料から作成。

写真4-1-2 俳句甲子園(決勝戦)の様子

写真4-1-2 俳句甲子園(決勝戦)の様子

松山市総合コミュニティーセンター。松山市湊町。平成19年8月撮影