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えひめ、人とモノの流れ(平成19年度)

1 活躍する愛媛産品

 平成18年の工業統計調査によれば県内には2,805の製造業の事業所(製造品出荷額は約3兆7,354億円)がある。
 これらの事業所は規模の大小を問わずさまざまな技術と生産能力、そして販売力をもって企業活動に取り組んでいるが、平成16年に四国経済産業局が発行した『四国が誇る日本一、世界一』には愛媛県の37企業を誇るべきナンバーワン企業(図表4-2-1参照)として列挙している。同書は列挙した企業の多くがいわゆる「ニッチ(*18)」な得意分野から活路を見出し、改革の気概を持って挑戦しつづける企業であり、こういった企業の存在が四国経済の大きな強みだと指摘している(⑤)が、愛媛発の工業製品が日本経済ばかりでなく、ひいては世界経済の発展に大きく貢献していることを私たちに改めて認識させてくれる。
 一方、豊かな自然や気候に恵まれ、また歴史と伝統に磨かれた県内の特産品や地場産品にも、生産量日本一を誇る品は少なくない。前掲書では地場産品として、四国中央(しこくちゅうおう)市の「祝儀用品」と「書道用紙」、今治市の「タオル」、そして宇和島(うわじま)市の「養殖真珠母貝」を挙げ、さらに日本一の生産量(漁獲量)を誇る農水産品として、「イヨカン」、「裸麦」「キウイフルーツ」「養殖真珠」「養殖マダイ」「天然マダイ」「コウイカ類」「エソ」「イボダイ」「ニベ・グチ類」を紹介している。
 近年、農産品などについて他産地との差別化を図るための「地域ブランド化(*19)」の取組が全国的に盛んになってきている。地域ブランドを冠することによって商品の質の高さが保証され、これまで以上の知名度と市場における付加価値が高まり、結果として生産地域にとって大きな経済効果がもたらされるものと考えられている。すでに特許庁に登録された愛媛発の地域団体商標は7件(申請中3件)となっている(図表4-2-2参照)。
 こういった全国的な動きを背景に、県は独自の地域ブランド戦略として「愛あるブランド(*20)産品」を認定し、県内外への販売促進を積極的に支援している。愛あるブランド産品には、統一キャッチフレーズ「愛媛産には、愛がある。」を踏まえて、安全・安心(人と環境への愛)、品質(産物への愛)、及び産地・特産(ふるさとへの愛)の「三つの愛」を持つ優れた県産農林水産物及び加工食品を「えひめ愛フード推進機構(*21)」が認定している。
 また、地域ブランド戦略の取組を民間で進めているのが松山商工会議所による「松山ブランド新製品コンテストNEXT ONE」である。コンテストでは、松山市内及びその周辺に事業所を置く会員企業の優れた製品を「松山ブランド」として認定し、広くアピールすることなどを目的に平成18年(2回開催)から始まり、本年で3回目となっている。審査は公募された工業製品部門と加工食品部門の2部門の製品を、それぞれ機能性(食品は味覚・加工)、デザイン性、新規性、市場発展性などの点について評価し、優れた製品を表彰している。
 このような優れた県産品や工業製品を官民挙げて全国に向けて強くアピールする取組が、同時に県産品へ注目度を高める効果をもたらしており、県内で開催された商談会に出展する企業や、そこに集まる県内外のバイヤー(*22)の数は増加傾向にある。平成19年9月に開催された「メイド・イン愛媛2007」(主催は愛媛銀行、愛媛県。会場は松山市大可賀(おおかが)のアイテム・えひめ。写真4-2-1参照)という商談会では、県内企業を中心に115社がブースを出展し、商談には大手量販店や百貨店などの県外からのバイヤー100社を含む、約1,000社が参加し、約4,400件の商談が繰り広げられている。このように愛媛発の優れたモノを送り届けている企業・個人の取組は活発であり、その取組が愛媛から広がるモノの流れを支えているのである。


*18:ニッチ 日本語では「隙間」や「くぼみ」と訳されるが、経済用語としては大手企業が得意とする規格化された均質の
  商品の大量生産方式に対して、その企業のみが持つ独自の技術力によって大手が手がけることのできない商品やサービス
  を開発、生産し、それによって生き残りを図ることを意味する。
*19:地域ブランド化 これまで全国的な知名度を獲得した場合などの様々な条件を満たす商品にしか地域名と商品名とに
  よって作られた商標登録は認められていなかったが、国は地域ブランドの育成を目指す観点から「商標法」を改正し、平
  成18年4月から「地域団体商標制度」をスタートさせた。平成19年10月26日現在で316件の地域団体商標が登録されて
  いる。
*20:愛あるブランド 平成19年11月現在で35品目78産品。(農林水産物部門30品目60産品、加工食品部門5品目18産
  品。)
*21:えひめフード推進機構 県・農協・加工業者・流通業者・報道機関・消費者など関係諸分野の代表者で構成する組織
  で、平成17年6月発足し、会長は加戸守行県知事。ブランド認定は平成18年9月から。
*22:バイヤー 日本語では価格交渉人と訳され、商品の価格や売買戦略などを取引メーカーや卸売り業者などと直接交渉す
  る小売店や通信販売会社などの仕入れ責任者のこと。

図表4-2-1 愛媛の日本一、世界一の企業(事業所)

図表4-2-1 愛媛の日本一、世界一の企業(事業所)

『四国が誇る日本一、世界一(平成16年版)(⑤)』から作成。

図表4-2-2 県内の地域団体商標(ブランド)

図表4-2-2 県内の地域団体商標(ブランド)

特許庁ホームページから作成。

写真4-2-1 メイド・イン愛媛2007

写真4-2-1 メイド・イン愛媛2007

アイテム・えひめ。松山市大可賀。平成19年9月撮影