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愛媛学のすすめ

「愛媛学」への期待

讃岐
 ありがとうございました。時間がなくなってしまって、司会が難しくなってきましたけれども、一言ずつ、先生方に、愛媛学に期待すると言ったらいいのでしょうか、今後愛媛学を作っていこうとする場合に、この辺には、注意しておいた方がいいのではないかなという視点や切り込み方。また、先程もずっと出ていましたけれども、研究者だけでなく、いろんな人がかかわっていくためにはどうすればいいか。調査法もあるでしょうし、ビデオみたいなことでもある。そういういろんな切り方があると思うのですけれども、その辺のことを、どうでしょう。池内先生から続けてお願いします。

池内
 さっきの話の繰り返しみたいになりますけれども、私はやはりアマチュアの方を徹底的に巻き込んで、組織化と言うと言葉が悪いかも知れませんけれども、そういう方を含めたライブラリー。例えば、映像によるライブラリーを、愛媛学ライブラリーというようなものを作っていくようなことはできないだろうか。これは当然、むしろアマチュアの方を主体に考えた方がいいのではないかというふうなことを含めて感じておりますので。そんなところです。

米地
 普通の科学は、例えばニュートンの法則でリンゴが落ちるというのは、東京でも、この愛媛でも同じでございます。この地域学というのは、そういう共通なものを追い求める科学とはちょっと違う。個別性、地域の個性を求める科学でございます。したがってそういうものの場合に、中央の学者のおっしゃること、(これは正しいことも多いのですけれども、)どちらかと言えば一般的、共通的なことをおっしゃる場合が多いのでございます。それとは違った、やはり地方に住んでいる者の目で、新しい愛媛の見方をしていただきたいのです。これは決して一人よがりになれということではなく、中央のいろいろな定説のようなものに対して、この地域ではそうではないといったような姿勢、いわば伴野先生の希望されている「荒々しさ」、中央の定説をはねかえす荒々しさと言いますか、そういうものを作り上げていただきたいと思うのです。皆さん一人一人が、自分の中にそういう個性的なものを作っていき、お互いが教え合い、学び合う。そういう愛媛学にしていただきたいと思います。

伴野
 私は、視点の置き方だと思うんです。これは庶民レベルの、庶民の目の高さに、一般人の目の高さに視点を置いていただきたいということ。それからもう一つは、中国は56の民族、漢族の他55の少数民族がいて、合わせて56の多様な民族がいるんですが、それが曲がりなりにも一つにまとまっているというのは、僕は中華思想のためではないかと思うんです。中華思想という求心力に引き付けられて、彼らは一つにまとまっているわけです。だから、愛媛思想というべきものを持つべきだと思うのです。それは愛媛が一番いいんだということでまとめれば、僕はそういう多様な地域性というのは、排除できるのではないか。このように思います。

常磐井
 私は、その地域で素朴に素朴に生きている人の方が、ピカッと光るものを持っていて、私の要求にこたえてくれた例が多うございます。インテリはいかんとは申しませんが、暮らしの持つ底力をくみ上げるには、素朴に生きた人の視点がやはり大切と存じます。
 話を取材することは歩くことで、歩けば新発見があります。現在人っこ一人通らない山の旧道には、ほとんど大きな草は生えていない。何百年踏み固めた昔の街道でした。肱川流域の文化は、山から里へ移ったということを、旧道は教えてくれました。

讃岐
 どうもありがとうございました。時間になってしまったのですが、愛媛学というのは、まだこれからだなという感じをもつ一方、しかし先生方のお話を聞きまして、やっていけば、何か面白いものになるのではないかという思いを強く持ちました。愛媛思想までは難しいかも知れませんけれども、自分たちが住んでいる生活の拠点である愛媛という地域をもう一回見詰め直してみる。研究の方法としては、聞き取りするという採集もあるでしょうし、あるいはタウンウォッチングみたいなこともあるでしょうし、調査法みたいなこともあるでしょう。いろんな方法でいろんな人たちが、愛媛という地域にかかわって、民謡、しきたり、料理等、いろいろな点について調べていったら、愛媛ならではの特性もはっきりしてくるのではないだろうか。山形は芋煮と言いますが、愛媛では芋炊きと言う。この違いはどこにあるのかという、そういう所を調べても面白いのではないかな。
 このシンポジウムを契機にして、できたら「愛媛学会」みたいなものができるとか、愛媛学ライブラリーとか、愛媛学研究所みたいなものをつくっていくとかして、いつでも、誰もが愛媛学の研究者として、あるいは学習者として学べる体制ができたらいいですね。そうしますと、もっと愛媛学づくりへの気運も高まるでしょうし、愛媛学構築に向かっての本格的な研究活動も進んでいくのではないかなと思っております。今日はつたない司会で、時間の調整等もできませんでした。ますますぼんやりされた方もおられるかもしれませんけれども、これで終わらせていただきます。どうもパネラーの先生、ありがとうございました。