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愛媛学のすすめ

私が思う愛媛学

 私が愛媛学に深い関心を持ち始めたのは、農山漁村文化協会(財団法人)が出版している「聞き書き 愛媛の食事」という本を買い求めてからです。この書の特徴は、東予・中予・南予の食文化をくまなく足を運んで調査し、生きた食文化の集大成を作り上げていることであります。
 私は愛媛で生まれ愛媛で育ち、このすばらしい愛媛に地域学のようなものが生まれ育ってもおかしくはないのではないかと考えておりました。愛媛には、歴史文化・自然環境・教育文化・芸術文化と優れたものがいろいろあります。しかし、現在積極的にこれらを調査しておかないと、愛媛学はもう生まれないというギリギリのところまで来ていると思います。その理由は、愛媛県は高齢化の進行が早く、だんだん良いものが失われていると思われるからです。
 現代は個性化の時代であり、地域の個性を生かした愛媛らしさの要素は十分あると思います。例えば歴史文化であれば、伊予水軍由来の吉海町・岩城島・生名島周辺、大三島の文化財、北条市(忽那氏)、松山道後周辺(河野氏)、そして南予・日振島に至る輝かしい線があり、自然環境をかいま見ると、県下全体に続く四国遍路、石鎚山渓、二神島の鯛網漁、南予では滑床渓谷・リアス式海岸・真珠養殖といったように、自然の美しさ・やさしさが十分出ていると思うのです。また、教育文化としては、俳句王国愛媛を築いた俳聖正岡子規をはじめ、坊っちゃん・伊予方言(なまり)を研究することにより、古い文化を新しい文化として発掘することが出来ると信じてやみません。芸術文化の例としては、現在の砥部焼も今昔の感があり、古い昔の色あいや焼き方を知る人は少なくなってきていると思われ、調査して次に伝えていく価値があると思います。
 そして、最も大切なことは、視点の置き方を誤らないように注意すべきだということです。視点は、地域住民、とくに地域のお年寄りに絶えずあることを忘れては、愛媛学は成り立たないと思います。地域に根ざした里文化は地域から生まれて来ることを忘れてはならないのです。
 今後の未来像、いわゆる愛媛のビジョンとして、地域の有識者や情熱のある人々と協力してプロジェクトチームをつくり、地域づくりにつながるような立派な愛媛学を作っていただきたいと思います。それぞれの地域を調査研究して、古い歴史と伝統を掘り起こす愛媛学を作り上げていただくことを期待します。