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愛媛学のすすめ

4 「山形学」の今後の課題と展望

 「山形学」は今、次の発展期へのステップを昇ろうとしている。講座そのものについても、また講座をも含めた「山形学」全体についても、課題は多い。では、前述の問題点などについて、その解決のために、いかなる課題とそれらへの対応についての展望をもっているのかについて述べよう。

 課題①「講座形態の多様化をはかる」

 「山形学」講座は、これまで、多くの分野を横断する、多数の講師による多様な分野からのアプローチによって、総合的な地域像を得ることを狙った「山形の○○」「○○の山形」といったテーマを取り上げてきた。この形式は今後も残しておくが、これのみでは、マンネリ化が懸念され、かつ総花的な底の浅いものととられるおそれがある。「山形学」の深化を図り、新鮮な印象を保つためには、他の形式のものをも取り入れたいと考える。
 現在検討しているものとしては、次のような新シリーズが考えられ、これら、もしくはこのうち一つを、従来の「山形の○○」型シリーズと並行して開講すべく検討中である。
 「私の『山形学』」シリーズ:一人の講師が、その講師の専門領域から、山形の地域性に迫るもので、講師自身の考える個性的な「山形学」を、5~6回(10~12時間)で講じていただくものを考えている。
 「『山形学』ゼミナール」シリーズ:演習形式で、一人の主任教授にあたる講師と、客員教授にあたる講師とが、テキストなどの資料を活用して、受講者と討議を重ね、「山形学」の創造を試みる。5~6回もしくはその倍程度。

 課題②「『山形学』の研究や学習についてのアウトプットを充実させる」

 これまでは講座中心であったが、閉じた「山形学」ではなく、外に開き、皆で作り上げてゆく「山形学」にするために、報告書の刊行、発表会、展示会の開催などを行い、「山形学」研究のアウトプットを豊かなものにする。
 なお、1993年3月には、講座の記録をまとめた出版物の第一陣として、「山形の山々」と「母なる川・最上川」との2冊が県から刊行されることになっている。

 課題③「講座受講者を中心に『山形学』に関心を持つ人々の組織化を図る」

 まず、正規の講義のほか、受講者が自発的・自主的活動として、適宜にコンパを開くなど自由に歓談できる場を作ったり、教室だよりまたは講座通信などの内部のコミュニケーションの手だてを生み出したりすることが望ましく、自然発生的に組織がつくられてゆくのが理想であるが、そのための土壌づくりを進めたい。

 課題④「講座講師を中心に『山形学』研究会ないしは『山形学』学会をつくる」

 これは課題③で述べた組織と一体となるべきものであるが、研究者の間において、この問題を検討することが、先決で、その準備会を構想中である。学際的で、かつ山形の地域的個別性と普遍的真理との双方を究める学会を目指して、多くの研究者の意欲的な取り組みを期待している。

 課題⑤「他の地域学との交流を行うとともに山形発信としての『山形学』にする」

 「山形学」を科学的・客観的なものとし、地域学一般の発展のためにも、他の地域学との研究交流を深めなければならない。その一方、山形および「山形学」の独自性、個性を高め、広く全国や世界へ発信する「山形学」を目指さなければならない。