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宇和海と生活文化(平成4年度)

(2)写真で見る自然③

 イ 危ない自然

 **さん(三瓶町朝立 昭和2年生まれ 65歳)は最近の自然の変容について、次のように語っている。
 「町の大切な文化財で、それこそ誇りにしていたマツが皆枯れてしまいました。お伊勢山には樹齢600年、高さ20m余りもあるマツで、海上の船からの目標にもなるほどの大樹でした。また、鴫山(しぎやま)にもそれは立派なお地蔵松がありました。このマツも高さ20mもあったでしょう。いずれも昭和50年ころに枯死してしまったんです。もうこれで松枯れも終わったかにみえましたが、まだまだ、現在でも三瓶の海岸地域や佐田岬半島でも松枯れが続いています。何でもない松枯れに見えますが、実は大変な環境の異変ではないでしょうか。
 セイタカアワダチソウも目につく植物です。わたしは最初九州方面でこの植物を見たのですが、これが佐田岬半島の瀬戸町を経て、三瓶町に広がったと推測しています。それが昭和51年でして、現在は路傍、空き地のほか、畑の中にまで侵入しています。北米原産の有な帰化植物だけに放置することはできないのではないでしょうか。(写真3-1-40~42参照)」

  ① 松枯れ

 マツの小枝を食い荒らすマツノマダラカミキリと、これに寄生しているマツノザイセンチュウと呼ばれる、1mm足らずの線虫が、マツの木に侵入してマツを枯死させている。それにしても、このような松食い虫が、これほどまでの大繁殖をなぜしたのであろうか。
 その理由は松食い虫の繁殖し易い環境が「酸性雨」によって作られ、これが誘因となっているのではないかとの説もある。

  ② こわい酸性雨

 工場のばい煙や、車の排気ガスが、地球の空気を汚している。こうした空気が雨雲と混ざりあって硫酸や硝酸を含んだ、酸性度の強い雨になって降ってくる。ヨーロッパ・アメリカ・カナダ・中国などでは、すでに深刻になっている。わが国へも気流にのって中国から運ばれていることが、近年明らかになっている。森林が枯れ、魚が死ぬ、大理石の建物や石像も皆ぼろぼろになるといわれている。

  ③ こわい地球の温暖化

 大気中の温室効果ガスと呼ばれるものがふえて、地球の温暖化が進んでいる。よく聞く言葉である。35年後には平均して1℃上がることが予想されている。こうなると、海水がふくらんだり、北極や南極で氷がとけ、海面の水位が上がる。
 台風が増えたり、乾燥地が広がったり、地球の気候が大きく変わるということである。
 このような地球規模の現象はさておき、前述の松枯れ現象とか、平成3年9月の19号台風も自然の調和を乱し、地域の人々の生活を脅かす大きな要因となっている。写真3-1-43は19号台風が愛媛県下の、特に海岸地域の柑橘類のみならず、畑の防風林・自然林・植林(スギ)などに大被害(塩害)を与えた例である。
 平成4年の8月には3回の台風が上陸している。豊かな自然を後世に伝承するため、人々は常に自然環境の回復と修復、さらには積極的な自然の創造によって、調和をはからなければならないと思う。

写真3-1-40 枯死した一里松

写真3-1-40 枯死した一里松

伊方町永田の一里塚。昔の陸路は里程を表す塚があり、ここに樹齢300年の松があった。昭和53年松食い虫により枯死した。平成4年9月撮影

写真3-1-41 セイタカアワダチソウ

写真3-1-41 セイタカアワダチソウ

北米原産帰化植物。三崎町下山伽藍山(413.6m)中腹の道路端を完全に占有したセタカアワダチソウ。花粉アレルギーの抗原植物。平成4年11月撮影

写真3-1-42 松食い虫による松枯れ

写真3-1-42 松食い虫による松枯れ

三瓶町下泊地区の松枯れの状況、佐田岬半島地域でも進行している。平成4年11月撮影

写真3-1-43 台風による塩害

写真3-1-43 台風による塩害

平成3年9月の台風19号は宇和海沿岸地域の柑橘類並びに防風林に対して甚大な塩害を与えた。写真は宇和海側の随所に見られるスギの枯死林。平成4年9月撮影