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宇和海と生活文化(平成4年度)

(4)浜の移り変わりと将来の夢

 護岸工事も進み、自然の脅威から生活が守られるようになった半面、失われたものも多い。各小中学校の校歌に唄われたマツも姿を消すなど、景観は大きく変化している。目につく自然環境の変化について、**さんは「以前は浜いっぱいに打ち上げられていたアオサが、最近は減りました。夏なんか、南風に吹かれて浮遊物が浜に広がり、タンカーの廃油が流れ着くこともあるし、汚れると増える黒い貝が、最近目立つようになってきましたなあ。」と、厳しい目で語った。
 そんな中で、子供たちと浜との新たなかかわりを聞いた。川之浜小学校では、アカウミガメの産卵時期になると子供たちが協力して卵を集め、小学校のグランドにある砂場に移す。毎年80~100個ほどで、そのうち60個程度が孵化し、再び海に返してやっている。
 町の将来を、**さんは次のように語ってくれた。

 若い人はサラリーマンがいいと言うし、「息子に嫁が来ない」と言いながら、娘は農家に嫁がせないし……。若い連中がVA活動で地引き網をやっとるが、なかなか仲間が増えなくて……。やはり町に活気が戻るには、若い人たちが働く場所がもっと必要だ。
 「観光」と言っても目玉がない。釣りやキャンプで瀬戸町を訪れる人は増えたが、バーベキューの材料にしても全部持参で、残るのはゴミばかり、お金は落としていかない。町起こしも一時的なイベントではなく、地場産業を生かした観光みかん園や漁業を生かした客の誘致に力を入れればよいと思う。高齢化の進んだ現状ではみかんをとる手間も省けるし、工夫しだいで一石二鳥になる。
 第二国土軸の豊後水道のルートは、トンネルだと入り口はずっと半島の付け根の方にできるので、できれば橋にしてもらいたい。そうすれば、この町にも若い人が増え、にぎやかになるでしょう。

 壮年会のVA活動や、小学生とウミガメのふれあいの話から、浜とともに生きる力強さと、浜をいたわる優しさが、今もしっかり受け継がれていることが感じられ、将来に期待が持てる気がした。