データベース『えひめの記憶』
宇和海と生活文化(平成4年度)
(1)伊予の橋立
日本三景と言えば、天橋立(京都府)、松島(宮城県)、厳島神社(広島県)であるが、前者2つは砂嘴(さし)と呼ばれる地形である。呼んで字のごとく、砂でできた鳥の嘴(くちばし)のような形の地形のことである。
三机湾の入口に突き出した砂嘴は、その昔「伊予の橋立(別名、曲り橋立)」と激賞され、そこにある須賀八幡神社のうっそうとしたウバメガシの叢林は「須賀の森」として県の天然記念物に指定されている(写真3-2-10参照)。
高橋和氏(⑤)によれば、三机には須賀にまつわる次のような伝承がある。
昔、松の浜の漁師が海岸に1枚のお札が流れついているのを見つけました。大したものではなさそうなので、そのまま海にすててしまいました。それから何日かたって、このお札がいまの須賀のあるあたりに流れつきましたのを、三机の漁師が見つけ、神様のお札に相違あるまいもったいないことだと思い、拾いあげて浜べにそっておいて帰りました。その翌朝、思いもかけぬ須賀の砂しが三机の港の入り口にできあがっていました。
高橋氏は、この伝承と砂嘴の形成過程の関係を次のように説明している。
この地方ではとくに冬季に北西の風が強い。砂嘴が三机湾の西側の湾口にできていることからも分かるように、浸食を受けやすい地質の「谷の尻鼻」の断崖絶壁の岩が打ち寄せる荒波に削られた岩のかけらが、松之浜の方向から海水の流れ(沿岸流)に沿って三机湾の内側に曲がりながら蓄積したもので、伝承の流れの記述と一致している。
写真3-2-10 「須賀の森」 平成5年1月撮影 |