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わがふるさとと愛媛学   ~平成5年度 愛媛学セミナー集録~

2 大島の祭りは、新居浜・西条の祭りの原型か

松本
 次に、新居浜の太鼓台の模様、あるいは西条のだんじりの模様を見ますと、皆さん言うまでもないことでしょうが、非常に形の上では違っております。かつては同じ西条藩の中で、片方は城下町ということはありましても、何故、隣り合わせの町でこうも二つの祭りが違っているのか。しかも、百数十年に及ぶかたちでそれが違っているのだろうか。これは、どういうようなことなんだろうか。こういったことは、素朴な、実は私自身の疑問でもありました。いつか機会がありましたら、そういうような違いをはっきりさせながら、しかも、それを支える人々の生活も調べたいなというような、そんな気持ちはありましたけれども、全然できないで今日に至ったわけですが、実は、そういうような大きな違いを解く大きな糸口として、大島のお祭りを見ることができるような気がします。それで、その、新居浜の太鼓台、西条のだんじりをつないでいくそのいわば原型ということになりましょうか、あるいは出発点になると言った方がいいのか、その三者の祭りの具合を、今度は今までの佐藤さんの御研究から、少し解説を願いながら、お話いただけませんか。

佐藤
 はい。ちょっと失礼なんですけれども、この中で、大島の秋祭りというのを御覧になった方、どのくらいおいででしょうか、ちょっと挙手お願いしたいんですが…。二人程、三人ですかね。非常に少ないんじゃないかと思います。逆に、新居浜の太鼓台見たことある方、どのくらいありますでしょうか…。新居浜の太鼓台になると、かなり、全員と言っていいくらいになりますね。大島のお祭りいうのは、同じ新居浜市内にありながら、本当に知られてないのが現実じゃないかと思います。しかも、そのお祭りというのが、非常に昔のお祭りが残っています。
 西条と言えばだんじり、新居浜と言えば太鼓台というふうに決められとるみたいなところがあるんですけれども、実は、僕たちがいろいろと新居浜の史談会の方々なんかに、古文書なんかも読んだやつ見せていただいたりすると、古い時代、新居浜にまず出てきたのがだんじりだったということを知って、非常に驚いたんです。別子銅山なんかができて、もしかしたら西条よりも早い時期に、だんじりが新居浜に入ったんじゃないかなあと、思うくらいのところがあるんです。銅山関係ですから、大阪なんかの上方との交流いうことになると、新居浜とのつながりはものすごく緊密なんです。当時の港いうのが、西条藩領で一番大きな港が実は大島なんで、そうすると、大島、新居浜、港の方から先文化が入ってくるんじゃないかなあと思います。で、まず入ってきたのがだんじりらしいです。そしてだんじりの文化というのが古い時代、200年くらい前にはあったのに、150年くらい前から、今度は讃岐の方から、もちろん上方中心に入って来るんですけれども、陸路を通るのか、海路にしても東の方から段々と太鼓台の文化が入ってきます。太鼓台が、150年くらい前から、だいたい新居浜地方に入ってきて、そして、その流れいうのが、東から段々進む中で、ちょうど西条ぐらいのところで、境目みたいな感じで、消えるわけです。新居浜は太鼓台だし、土居町も、三島、川之江から観音寺、讃岐の方まで、同じような形式の太鼓台がずっとあるんですけれども、西条になるとだんじりが主流で、太鼓台がぽつぽついう形になってきます。
 どうも、東の方から太鼓台の流れというのが、150年くらい前に入ってきたらしいです。そして、そのあと、もともとあっただんじりいうのが、新居浜はどうも消えてしまったらしいんです。ところが、大島の方は、そのだんじりが、まだ今に至るまで残っています。そして、今消えてしまっているんですけれども、大島にも太鼓台があったようですし、大島というのは、島であることで、大きな流れの中から流されることなく、古いものが残っている、そんなお祭りが大島のお祭りなんです。で、大島へ行ってみて、伊勢音頭を歌いながら運行する、ろうそくの火をともしてずっと夜に動かしているところ、西条のお祭りに非常に似たところがあります。しかも、大島というと新居浜でもずっと東の方ですよね、かなり新居浜の東部にある大島にそういったものが残っているいうところをみると、新居浜の中心部においても、かなり古い時代はそういった形が残ってたんじゃないかなと思います。今現在残るものだけ比べてみると、新居浜の祭り、西条の祭り、全然異質なものみたいな感じがします。ところが、古い時代にさかのぼってみたら、かなり似ていた、そういったものがだんだんと明治からこっち、移り変わってきた、しかもそれが現実にタイムマシーンでさかのぼらなくても、大島へ行くと見ることができるという、その辺が面白いなあというふうに感じました。