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わがふるさとと愛媛学   ~平成5年度 愛媛学セミナー集録~

2 青少年の伝達学習をどうするか(地域に根ざした教育の主幹に祭りを)

 発達心理学でも「三つ子の魂百まで」と言うが、「太鼓馬鹿」の孫を作ろうと思ったら、まず、3歳までの子にきれいな着物を着せて、太鼓がドンドンなっている所でだっこして、「♪ソーラ、ソーラ、ソーラ」という調子に合わせてやると、やがて自分で調子を取るようになる。その子は大きくなったら、必ず「太鼓馬鹿」になる。さらに、10歳のがき大将時代に、実際に太鼓を組んでいるところへ連れていき、乗せたり太鼓をたたかせたり、あの太鼓の幕のしょうのうの臭(にお)いを嗅(か)がせてやると、より確実に「太鼓馬鹿」が育つ。
 竜に関して、感動した話がある。先ほど話した髙科さんは自称「太鼓馬鹿第2番」だと言っているが、第1番はおそらく、粂野為一さん(故人)ではないかと思う。中国へ行って戻るとすぐ、私の所へ来て、「先生。僕は、新居浜太鼓台の竜の元祖を見てきました。」と言う。竜は想像上の生き物だからだれも見たことはないはずだが、紫禁城、故宮博物館の中にある「九竜」、これをはじめて思い描いた先人のものすごさを、心から感じていたようだ。「竜」一つからもいろんな歴史的なことが言える。
 また、太鼓の音についても、腹の底までこたえてくる。士気を鼓舞する音と、あの調子は独特である。新居浜人はあれが鳴りだしたら、じっとしておれん。だから、お祭りのときに学校で授業するのは、愚の骨頂だと思う(教育長苦笑)。
 掛け声も興味があるので、詳しく調べた人に、ぜひ教えてほしい。伊勢音頭の最後にも「♪サーサートコヤ、ヨーイヤナー、アリャリャーコレハ、イセーノセ、ナンデモテー」というが、あれは何か。子供に、「あれは何ですか。」と尋ねられたとき、ごまかしてはいけない。また、新居浜では、「♪チョーサジャ、チョーサジャ」とか、「♪ソーリャ、ソーリャ、ソーリャ」というが、その意味は何か。
 伊勢音頭の方は、どうもこれはヘブライ語に由来するらしく、「汝(なんじ)ら喜べ、もっと喜べ。エホバは我々に仇(あだ)をする敵を、海に投げ給うてくれた。エホバは偉い人である。憐れみ深い人である。我々は、そのエホバをみんなで奉ろう。…」という意味らしい。歌う人が、このことを知っているか否か、そういう気持ちや心を持っているかどうかを考えてみると、ちょっと寂しい。カタカナで書かれる外来語の掛け声は、必ず「神さんよ、神さんよ」というような意味が込められているという気持ちで、声を発すると、もっと力が入るだろう。古きをたずねだり、語源へ迫るという意味からも、新居浜太鼓祭りのルーツを探る学習を進めていきたい。