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わがふるさとと愛媛学   ~平成5年度 愛媛学セミナー集録~

2 古代人骨との出合い

 調査区の西側のグリッド(調査区を明示するための「2mx2m」の区画)を発掘中、偶然に古人骨の頭蓋部分を発見し大変驚いた。調査を進めるうち完全な形をたもった古代人の遺体と判明した。この遺体は東南に頭を向け、埋葬形式は手足を体に添って、真っすぐに伸ばした「仰臥伸展葬」といわれる埋葬形式であり、骨格のたくましさに強い印象を受けた。この古人骨は、発掘調査後、徳島大学医学部解剖学教室の山田教授によって鑑定、復元が行われ、14~15歳の女性と判明した。人骨出土をマスコミによって報道され、しばらくは見学者で調査の障害になることもあった。
 調査中、調査員の一部の方は、「おらは骨いじるのは嫌ぞ。」というものもおり、「人の墓を暴くと早死にする。」なんていう者もいたが、実際に見てみると大変きれいなものだと思った。骨考古学を専攻するある学者の言葉を借りるならば、「初期人類の進化を研究するものにとって化石人骨がダイヤモンドにも勝る宝石であるように、考古学も含めて先史時代のことを探求する者にとっては、古人骨も同じくらいに貴重な宝石のようなものであるはずである。」と言われ、性判定や年齢推定はもちろん、体つきや顔立ち、ひいては日常的な生業活動、はたまた古病理学的、古栄養学的アプローチもできる、つまり貴重な情報のつまった死者からのダイイングメッセージであると聴かされ、なるほどと思うようになった。