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わがふるさとと愛媛学Ⅱ ~平成6年度 愛媛学セミナー集録~

◇国有林、町村有林、民有林が、それぞれ役割分担を

 こういったことを踏まえ、1988年ころ、国有林のあり方やブナ林の保護などについて、林野庁にいろんな要請をしたので、その要点を紹介をしておきます。
 まず第一に、原生的な自然林はとりあえず伐採を中止して、残り少ない「森の基本」として、考え直してみたらどうかということです。これは「広葉樹を1本も切るな。」というものではなくて、もう一度考え直そうじゃないかということです。
 次に、自然林の回復。これは主に二通りの方法があって、「元々の自然林状態に戻すための自然林の回復」と、もう一つは「有用樹を生産する目的も含めた自然林の回復」です。だから自然林に回復できる所のケヤキ、ミズメ、ミズナラなどをある程度太らせるように手を入れながら、自然に近い状態で回復させるということです。
 第三は、何種類かの広葉樹を意図的に植えるなり残すなりして、「広葉樹の多種混合育林」(僕は勝手にそう名付けているんですが)を造るということです。そして、キハダ材が取れるようになったらキハダを切り、ヤマザクラ材が取れるようになったらヤマザクラを切る。最終的にはブナやケヤキの200年から300年の木も取れるように育てる。そういう森林を何か所か造って、必要に応じて伐採しながら、環境保全も図るというような方法です。
 それと、自然林の回復と多種混合育林の試験地を造ったらどうか。何か所か試験林を造って、たとえば自然林に回復する場合には、元々の原生林のすぐ隣がいいとか、混合育林は離れた所のほうが逆にいいとか、効率よく回復させたり木材生産をしていくための基礎データをとったらどうかということです。
 また、人工林に関しては、除間伐や択伐(一定の目標にねらいを付け、森林の木を切り出すこと)を行いながら、大径木を育てたらどうかと。民有林では、大径木まで育てるのはなかなか大変だから、国有林が中心に行うべきではないかということです。
 一方、国有林に対して地元の市町村有林は、スギ・ヒノキの人工林だけでなく意図的に、地元にふさわしい自然の森や雑木林を造るんです。子供たちが、クワガタ、チョウチョ、トンボなどを捕ったり、ある程度自由に活動できる場所を確保して、自然観察や環境教育に活用していくんです。体験を通して、子供たちに山の姿を学ばせていく場所作りということです。