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わがふるさとと愛媛学Ⅳ ~平成8年度 愛媛学セミナー集録~

◇小松に住んで19年

 皆さん、こんにちは。南川に住んでおります蔵田典子です。
 私たち夫婦は、結婚と同時に小松町に来まして、今年で19年になります。夫は、南予の八幡浜出身で西条に勤めております。私はお隣の東予市出身です。
 なぜ小松町に住むようになったかと言いますと、理由はズバリ、道なのです。今日のテーマにぴったりなのです。夫は5人兄弟の末っ子で、八幡浜に住んでいる父や兄と、松山に住んでいる姉たちが遊びに来やすいように、また、当時大阪にいたすぐ上の姉が八幡浜に帰る時に、ちょっと寄って一休みできるように、できるだけ分かりやすい所に住みたいというのです。結婚前の私は、まだ素直でしたので、「はいはい、分かりました。」ということで、国道の通っている、この小松町で新婚生活を始めたわけです。
 大開(おおびらき)の町営住宅で5年間、お世話になり、小松町に住み着く覚悟で、今住んでいる所に家を建てて14年になります。今の所は、高鴨神社をちょっと下りた所にあります。
 今の所は、昔からの人が多くて、皆さん、いろいろなことを知っています。おばあちゃんたちの会話は、「あそこの嫁さんはの、役場の近くの誰やらのおじいさんのいとこのなんやらすけさんの嫁さんの里の次男の娘じゃがの。」という感じの話で、私には頭の中がグルグルしてきます。御近所では、名字ではなくて、名前で皆さん呼び合っています。これは同じ名字が多いからかもしれません。私は人里離れた森の中で育ちましたので、とても新鮮に感じています。
 私の場合は、御近所に恵まれましたが、先日、ある会でのことですが、「わたしたちは、30年間、この小松町に住んでいますが、いまだによそ者扱いです。」とおっしゃる方がいました。小松の人には、旧1万石の城下町という誇りのようなものがあり、よそ者へのこだわりは、相当強いように思います。しかし、一方では、「わたしの所は、若い人が来てくれんのよ。来てくれたら、そりゃあもう皆で大事にするのに。」とおっしゃる方もいました。この方のように、今まで守ってきたものだけを大切にするのではなく、やはり新しい風を歓迎する気持ちも必要かと思います。