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身近な「地域のたからもの」発見-県民のための地域学入門-(平成22年度)

2 愛媛学の願い

 自分の足元を見つめることで、これから歩んでいくべき方向が明確になるのと同様に、地域の未来像を描き、地域を活性化させるためには、まず地域をよく知り理解することが必要です。そのため、愛媛のアイデンティティを求め、愛媛の知的土壌を作るための学問であると同時に、よりよい地域をみんなで創るという気運を盛り上げ、これからの愛媛の歩みの方向性を探っていく手がかりともなる愛媛学には、大きな期待がかけられています。
 その期待を、愛媛学に課せられた役割にとらえ直して整理すれば、まず、「地域のたからもの」すなわち地域に根づいた生活や文化、産業などを見いだし、それらを調査研究して記録することです。
 そして、若者を中心に人々のふるさと離れが続く中、地域を担う人たちが自主的・主体的に「地域を知り、地域を認め、地域を創る」ことができるよう地域学を普及推進することを通して、自信を持って地域を語ることのできる人を増やし、地域を活性化させ、個性豊かな地域文化の創造に寄与することです。
 本章の第1節で「小・中学生のふるさと学習作品」について触れ、作品の一つ、「祈りの詩人坂村真民」を紹介しました。中学生の作者が自分の足で歩き、身近な地域をじっくりと見つめることを楽しんでいることが伝わってくるこの作品には、「私の好きな真民の詩」として、「あとからくる者のために」という題名の詩が取り上げられています。その詩の一節にある、「未来を受け継ぐ者たちのために/みな夫々(それぞれ)自分で出来る何かをしてゆくのだ」という言葉のように、地域の「未来を受け継ぐ者たち」が、地域を見つめ直す楽しさを味わうきっかけとなり、「地域のたからもの」を発見する手がかりとなることが、愛媛学の願いです。
 その願いを込めながら、次章で、地域調査の視点や方法、地域調査を行う際に気をつけておきたいことなどを紹介します。