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河川流域の生活文化(平成6年度)

(2)わがまちのいもたき

 昭和41年(1966年)に大洲で始められた観光いもたきは、昭和50年代から県下各地に普及した。平成6年愛媛新聞で紹介された県下のいもたきだけでも、大洲を始め、五十崎、松山、西条、新居浜、土居(宇摩郡)、それぞれ河原を会場とし、地元の特色を生かして行われている。さらに屋上ビアガーデンにもいもたきが登場する。かって大洲の秋の風物詩であったいもたきが今や愛媛の秋の風物詩になったかに思われる。

 ア 西条のいもたき

 **さん(西条市神拝 昭和5年生まれ 64歳)
 **さんは飲食業を営み、西条のいもたきを取り仕切っている。
 「場所は加茂川の河原(写真3-3-29参照)、建設省の『ふるさとの川モデル事業』指定のとき、この辺りは、いもたきの州浜として残そうということになっています。河原は広く、川の水は豊か、対岸は八堂山、環境としては最高です。昔から夏には水遊びや泳ぎを楽しんだ場所で、キャンプ地としても最適です。いもたきは今年(平成6年)で18年目、最初の年は週2日だけ、2年目からは9月いっぱいやっていました。ところが、いもたきを経験した子供が大人になり、都会へ出ていく。その人たちが盆に帰省して、いもたきをやってほしいと言う。そこで、都会に出ている人にも故郷の思い出につながるものを味わってもらおうということになり、7~8年前から8月の第2土曜日から9月いっぱいということにしました。こちらもお盆ぐらいは休みたいのだが、『おじさんやってや。』という声があるのを有り難いことだと思ってやっています。実行委員会制度で運営し、わたしの家が事務所になっています。注文は1食2食で受け、1人前ずつ材料とだしを用意し、客自身が煮るという形をとっています。材料は11品、トリ貝を入れます。いもについては、今のところ宮崎県の方から仕入れています。『なぜ西条のいもを使わんのぞ。』と言われ、『好んで県外から買いよるんではない。そんなら作ってくれんか。』ということで、農協に委託したことがありました。ところがいものサイズがそろわない(1kgそろえるのに3~5kgのいもが必要)。農家の方では大小突っ込みで買ってくれと言う。それではこちらが困る。また、有名な宇摩郡の土居のいももおいしくなるのは9月中句、いもたき開始に間に合いません。やむを得ず、安定供給可能な宮崎方面から仕入れているのです。いもたきは野外食で、素材に片寄りがない。大人も子供も気軽に好き嫌いと関係なく食べられるのが特徴です。それに値が手ごろ、私どもはできる限り値上げをしないことにしています。その代わりにできるだけお客にセルフサービスをお願いしています。帰りがけ、不要なもの、食べ残したものなどを一定の場所まで持って来てもらうことにしています。この後始末の協力で人件費を節約し、値上げを押さえようとしています。」

 イ 広見のいもたき

 **さん(北宇和郡広見町近永 昭和14年生まれ 55歳)
 割烹(かっぽう)旅館を経営している**さんは、広見町の奈良川河畔で行われているいもたきの維持に努めている。
 「広見のいもたきは今年(平成6年)で15年目、南予では一番古いのではないかと思います。役場の産業課長さんから『町おこしになるから始めないか。』と業者に声がかかったのがきっかけだったように思います。以前は4業者がいもたきにかかわっていたこともありましたが、今年からはわたしのところだけになってしまいました。いもたきの材料は、いも、鶏肉、厚揚げ、こんにゃく、ゆで卵、うどん、いもは町内の業者から仕入れますが、地元のいもは時期的に間に合わないと思いますので、恐らく九州あたりのいもではないでしょうか。広見のいもたきの特色は『川ガニ』(写真3-3-30参照)をつけることです。一人にカニ1匹(以前はよくとれて2匹つけたときもあったそうだ。)、お客には大変喜ばれるのですが、カニが少ないときは大変なのです。広見川のカニで間に合わないときは高知県十川村(現十和村)の方まで買いに行きます。往復6時間ぐらい、日当、ガソリン代を考えると採算がとれません。いもたきとカニ、それにおにぎりと果物をつけて、おまけに持込み可、お客が少ない日には赤字です。1日5~10人というときもあり、電気代だけでもばかになりません(なべは10人で一なべ、5人以上グループでということにしている。)。また、会場に料理を運ぶのも骨が折れますが、雨が降ると、今度は会場を座敷に移さなければなりません。人手が要りますが、アルバイトの人がなくて困ることもあります。期間中、最低5~6人必要です。60歳過ぎの人に頼んだりしています。後片付けがこれまた大変、持ち込んだビール瓶や缶などごみの始末に頭を悩ませています。片付けが終わると午後11~12時、朝は6時から準備です。反省会のとき必ずごみ処理の問題が話題になります。しんどいから、ふとやめようかと思うこともありますが、地元はもちろん宇和島方面からもたくさん来てもらうし、時には、松山、大阪からもお客があります。町もいろいろ応援してくれます。ですから、広見の三大イベント(いもたき、日曜市、そうめん流し)の一つになっているこのいもたきを何としても守り、お客に喜んでもらうとともに、町の観光、町の活性化のお役に立てればと思って続けているのです。」こう語る**さんの「細うで繁盛記」は今日も続いている。

写真3-3-29 西条のいもたき会場

写真3-3-29 西条のいもたき会場

平成6年10月撮影

写真3-3-30 川ガニを生かしておく小屋の中

写真3-3-30 川ガニを生かしておく小屋の中

**さん経営の割烹旅館の敷地内に設けられている。平成6年11月撮影