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臨海都市圏の生活文化(平成7年度)

(1)内航海運の役割

 内航海運は、わが国の明治時代以降における近代産業の発展にともない、国内の石炭はじめ鉱石その他の工業原料、産業基礎資材などを瀬戸内海沿岸や日本列島各地を網の目のように結んで輸送してきた。特に、第二次世界大戦後のわが国の経済復興と、昭和30年代後半以降の高度経済成長を底辺から支えてきた。
 その後、内航海運は、二度のオイルショックの波をかぶって低迷を続けたが、昭和61年以降の景気拡大によってその輸送量は、大幅に増加してきた。しかし、平成3年以降は景気の後退により輸送量は減少を続け、再び厳しい経営環境に置かれている。
 今日の国内貨物輸送は、主として自動車(トラック)と内航海運が担っている。『運輸白書(平成6年版)(①)』によれば、平成5年度の国内貨物輸送分担率を輸送トンキロ(輸送量×輸送距離=実際の輸送効果を現わすもの)でみると、自動車51.5%、内航海運43.6%、鉄道4.7%であり、国内輸送における自動車と内航海運の役割の大きさがわかる。また、平均輸送距離でみると、内航海運441.6km、自動車47.4km、鉄道320.9km、航空951.6kmである。このことからも、自動車は主として短距離の小口輸送を担い、内航海運は長距離の大量輸送を担って、わが国の国内物流と国民生活を支えていることがわかる。
 しかし、現在の内航海運業界は、規制緩和という時代の流れの中で、船腹調整制度(*3)の見直しと構造改善などの大問題に直面しており、内航海運の前途は波高いものがある。


*3:この制度は、昭和39年(1964年)6月、「内航海運業の健全な発達を図り、もって内航海運の円滑な運営と内航海運業
  の安定化を確保し、国民経済の健全な発展に資する」目的で制定された内航二法(内航海運業法、内航海運組合法)による
  制度。船腹過剰による競争激化を避け、中小零細海運業者を保護するため、船の新造にあたっては一定トンの既存船を廃棄
  させるもので、現在は新船1隻につきほぼ1隻の廃棄となっている(スクラップ・アンド・ビルド)。この制度は、内航業
  界全体の船舶トン数を一定にしてきたいわばカルテル的制度(独占禁止法の適用除外)であるが、政府が独禁法の適用除外
  カルテルを原則として廃止する方針を示したことに伴い、運輸省でも見直しを検討しており、平成7年6月には運輸大臣の
  諮問機関である海運造船合理化審議会(海造審)が船腹調整制度を事実上廃止する答申を出した。これに対して内航海運業
  界は、船腹調整制度を廃止すると船腹の過不足が生じ、過当競争と寡占化が進むこと、資産としてのスクラップ枠(廃船の
  権利=営業権、建造引当権)の取り上げは零細海運業者の死活の問題であること、などの問題点を指摘している。