データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

えひめ、昭和の記憶 ふるさとのくらしと産業Ⅲ-八幡浜市-(平成24年度「ふるさと愛媛学」普及推進事業)

第1節 漁業に生きる

 「みかんと魚のまち」をキャッチフレーズとする八幡浜市は、全国有数の温州ミカン産地であるとともに、11を数える漁港と四国有数の規模を誇る八幡浜市水産物地方卸売(おろしうり)市場(昭和55年〔1980年〕に4卸売市場が統合して八幡浜市により開設)を有する水産業の町である。
 八幡浜市の漁業は、漁船漁業が中心であり、沖合底びき網漁業(通称「沖合トロール漁業」)や、小型底びき網漁業、まき網漁業、一本釣りなどの沿岸漁業を中心に、宇和海や豊後水道(ぶんごすいどう)沖合を主な漁場として、平成21年度には、市場の取扱量で10,219t、取扱高で約47億円の水揚(みずあげ)があった。しかし、近年の市場の取扱量と取扱高は、それぞれ最も多い時(47,751t〔昭和55年度〕、約147億円〔昭和60年度〕)の約5分の1と約3分の1にまで落ち込んでいる。その要因としては、魚価の低迷、燃料や飼料の高騰(こうとう)など、漁業経営環境の悪化からくる漁業従事者の減少と、漁場における水産資源の減少が考えられる。このような中、八幡浜市では、平成22年度に「八幡浜市水産振興基本計画」を作成し、地域特性をもとにした「儲(もう)かる産地づくり」を目指して、基幹産業である漁業の振興に取り組んでいる(①)。
 本節では、その八幡浜市の漁業の中でも、「漁業の一時代を築いた」といわれる沖合トロール漁業と、11ある漁港のうち舌田(しただ)漁港(舌間(したま)・合田(ごうだ)地区)の沿岸漁業に焦点を当て、漁業に生きる人々のくらしや仕事を、聞き取り調査や文献調査によって探った。