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愛媛のくらし(平成10年度)

(3)年を越す日

 12月31日。今年もあと1日を残すだけになり、どこの家でも、年越しの準備に忙しい。本節を締めくくるにあたって、**さん、**さん、**さんに吉田の大みそか風景を聞いた。
 「(**さん)大みそかは、昔から『掛けは大みそかに』というようなことでしたが、ここ数年は早め早めということで、2、3日前から掛け取りに走りますから、昔のように大みそかに狂わないけんほど忙しいことはないですね。裏の(家事をする)女房が忙しいだけじゃないですか。店は、やっぱり、お掃除なんかをしながらですから、閉めるのは夜の8時くらいになります。30日、31日はお客さんも多いですからねえ。氏神様には、除夜の鐘がすんで、元旦の夜中ごろから行きます。」
 「(**さん)昔は買物はほとんどが付けでした。お通い帳というのがあって、それに売ったものを書いておいて、お盆と年末に『掛け取り』いうて集金に行くわけです。時期になると集金の人が次々来よりましたし、こちらからも行きよりました。特に大みそかは12時過ぎまでかかりよったんじゃないですか。今は毎月末集金ですし、あんまり付けで買うということもなくなりましたので、大みそかいうても、そんなに忙しくはありません。
 大みそかには、昔は井戸の回りをきれいにして、蔵も、白い土戸(つちど)を全部閉めてお正月3日間は蔵を開けなかったんです。いつも三が日は白い土戸が閉まったままでしたし、井戸も使わなかったように思うんですけど。」
 「(**さん)除夜の鐘は、今年から来年にかけてつくということで、わたしの寺(一乗寺)では大みそかの夜の11時30分ころからつき始め、終わるのは元日の0時10分くらいです。寒い時期のことですから、鐘は火をたきながらつきます。わたしは初鐘(最初の鐘、一番鐘ともいう。)をついたら本堂に上がって読経をします。あとは檀家や近所の人たちが順番につきます。鐘の間隔は30秒くらいですが、つく人によって様々で一定しません。しかし、どんな場合でも、つく鐘の数は百八つで、それ以上でもそれ以下でもありません。108までの数字を書いた紙を用意し、つくたびに1枚ずつ燃やしながら、あとなんぼ(いくら)と数えていくんです。宙で数えていたんでは忘れますから。
 お参りに来た人には、年越しのそばとお神酒を上がっていただきます。除夜の鐘のあと、わたしはお檀家さんの御先祖新年供養をしますので、休むのはそれが終わってからです。お参りの方の中には、わたしの読経中、後ろに座っている方もいらっしゃるし、お位牌堂に行って御先祖様に手を合わせ、鐘をついたら、神様の方に初もうでに行かれる方もおられます。」