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愛媛の祭り(平成11年度)

第1節 神前に舞う

 神事にかかわる芸能のうちで最も代表的なものが神楽である。それは、神座(かみくら)(神霊を招請して安置する場所)を設け、神々を勧請(かんじょう)(神霊を招き迎えまつる)し、その神前で鎮魂、清め、神事などを行ったのが古い形であるという(①)。今日では、鎮魂の祈禱(きとう)としてよりも、神事に伴う歌舞として広く各地で行われている。素面(すめん)で舞う採り物(御幣(ごへい)・剣など舞人が手にたずさえる物)の舞と神話を脚色した神能(しんのう)(*2)とで構成する出雲(いずも)流の神楽と、獅子頭(ししがしら)によって悪魔払い、火伏せ(火災を防ぐこと)、息災延命(災いを取り去り、命を延べること)を祈禱する獅子舞とが愛媛県ではよく知られている。
 「1 神をまつるうたと舞」では、愛媛に伝承されているさまざまな神楽のうち、越智(おち)郡大三島町(おおみしま)の大三島の神楽、喜多(きた)郡肱川(ひじかわ)町・河辺(かわべ)村の鎮縄(しめ)神楽及び宇和島(うわじま)市・北宇和郡に伝わる伊予神楽をそれぞれ取り上げて、それらの神楽の特色や保存伝承に取り組んでいる人々の思いを探った。
 「2 悪魔を払い、鎮める」では、県下に伝承されている芸能のうち、各地で広く演じられている獅子舞のなかから、地域的な特色を持つ、越智郡大西(おおにし)町九王(くおう)の継獅子(つぎじし)、温泉郡川内(かわうち)町北方(きたがた)の獅子舞及び南宇和郡内海(うちうみ)村家串(いえくし)の荒獅子(あらじし)をそれぞれ取り上げ、それらの特色や保存伝承に取り組んでいる人々の思いを探った。


*2:島根県鹿島郡佐太神社に伝わる神楽、佐陀神能のこと。猿楽能の様式を神楽に取り込んで再構成したものである。