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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

三 中予(松山)地域

 自然環境の特色

 愛媛県の中部地方にあるこの地域は、松山、中予西部、上浮穴、忽那諸島の四地区からなっている。
 中心都市である松山市とその近郊の市町村をふくむ松山地区は、重信川流域から高縄半島北部、南には石鎚山脈から出石山地の北麓という地形的にきわめて画然とした範囲である。中予西部地区は中央構造線に沿った伊予灘沿岸と肱川流域の東部をふくむ。上浮穴地区は四国山地のなかの久万盆地と面河川上流域の谷となっている。
 これらの地形による特色ある地域は、分水界で明瞭に区分されていることが気候区の設定にも重要な要素となっている。すなわち、気候区では松山地区や中予西部地区の伊予灘沿岸が中部海岸気候区となり、肱川流域や面河川流域では内山・小田気候区、久万高原気候区、仁淀川上流気候区ならびに石鎚山地気候区などの山地気候となっている。
 この自然環境の地域性を反映して、植生の分布でも海抜高度五〇〇mから一〇〇〇mのウラジロガミ・モミ林域、同じく一〇〇〇mから一七〇〇mのミズナラ・ブナクラス域植生が県内で最も広くみられる地域となっている。また、瀬戸内海の忽那諸島は、東予地域の越智諸島と同じく島しょ気候区となっていて、松山市の市街地では都市型の気候が出現する。

 経済活動の特色

 農業地域は、自然環境の多様性と松山市の都市化によって、松山近郊農村地域をはじめ高縄山地農山村地域、中予農山村地域が松山地区で認められる。これに対して、山地の多い中予西部や上浮穴地区では、中予農山村や中予山村地域に属するところが多い。漁業でも松山北条沿岸と長浜・伊予沿岸の二つの地域が北から西へと瀬戸内海沿岸漁業を分けている。
 商業では、卸・小売業ともに松山市がとびぬけて大きく、工業でも松山工業地域が松山地区全体に広がっていて、とくに内陸部の川内町では電気機械工業の立地によって工業生産水準が高い。人口では、松山市を中心とした都市型地域が認められ、北条市や砥部町などに都市近郊における準発展型が現れている。いっぽう中予西部地区や上浮穴地区では、中南予山間地域の人口減少と老人人口高比率、出稼ぎ常習などの型をあわせもったところとなっている。

 松山都市圏と地域の結合 

 中予地域の最も大きな特性は、松山市の都市勢力が広い範囲にわたっていることと、それが結節地域として通勤通学、交通流、消費者買物行動などのすべてにおいて松山市の中心性が著しく強いことである。とくに、これまで南予地域に入っていたとされる喜多郡長浜町のほか、伊予郡中山町、広田村、上浮穴郡小田町などは松山都市圏内にあって、南予地域との漸移地帯となっていることに注目したい。
 これに対して、久万町を中心とした上浮穴地区が、通勤通学や交通流で久万副次圏を形成していることは、地形的条件によって松山市への時間距離がなお短縮をみていないことと、久万町の地区中心機能の集積が作用したものとみてよい。