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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

4 出入りの多い海岸線

多様な海岸地形

 愛媛県の海岸地形は地域によってかなりの違いをみせている。燧灘沿岸の川之江市から伊予灘沿岸の伊予市にかけての瀬戸内海沿岸は、一部を除いて比較的単調な砂浜海岸となっている。特に、西条市から東予市にかけての地域は遠浅であるため、江戸時代以降何回かにわたって干拓が進められてきた(写真2ー6)。これに対して、伊予市南部から佐田岬半島にかけての海岸は、顕著な断層海岸として知られており、切り立った山地斜面がほぼ一直線に連続して海に臨んでいる。そして、佐田岬半島より南の地域、宇和海に面する海岸は、出入りの多い極めて複雑な海岸となっている。

 リアス海岸
      
 宇和海沿岸にみるような出入りの多い海岸、海岸にまで山地のせまった半島と、その間にはさまれた奥深い湾に臨む小低地とが複雑に連なって鋸歯状を成す海岸はリアス海岸とよばれている。その名はスペイン北西部における湾の呼び名「リア」に由来する。日本では東北地方の三陸海岸の例がよく知られているが、愛媛県の南部や三重県の志摩半島付近をはじめとして他にもいくつかの例をみることができる。愛媛県の周辺では、豊後水道をはさんで対岸に位置する大分県南東部や、紀伊水道をはさんで相対する徳島県東部や和歌山県西部にもリアス海岸が認められる(写真2-7)。
 リアス海岸は沈水海岸、すなわち、陸地が海に対して相対的に沈むことによって形成された海岸地形であって、沈降以前の尾根の部分が半島となり、谷が溺れ谷となって入江や湾になったものである。