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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

4 低い山地と平野の発達する地域

 内帯の山

 県内の地形は中央構造線の北と南でかなり異なっている。その北側の内帯側は低くなだらかな傾向地と丘陵をもち、外帯側では高く険しい山地が分布する。特に西条市以東では石鎚断層崖とよばれる大規模な断層崖がほぼ一直線に連なっており、内帯側と外帯側とを明瞭に分けている(図2―16)。内帯の地域には、高縄山地をはじめ、高縄山地周辺や石鎚断層崖の前縁部に発達する丘陵、越智諸島や忽那諸島を構成する山地、丘陵など海抜高度のあまり高くない山地や丘陵が分布する。このうち、高縄山地は東に東三方ヶ森(一二三三m)、西に高縄山(九八六m)という二つのピークを持っており、山地の大部分は花崗岩によって構成されている(写真2―15)。
 越智諸島や忽那諸島の島々も大部分が花崗岩より成り、大三島の鷲ヶ頭山(四三六・五m)、大島の念仏山(三八一・九m)、岩城島の積善山(三六九・八m)など三〇〇~四〇〇m前後の低い山が存在する(写真2―16)。
 中央構造線の前面には、新居浜市中心部をはさんで東側および西側に分布する丘陵状の山塊や、川内町と重信町の境界にそびえる塩ヶ森(五二四・九m)や番駄ヶ森、伊予市と砥部町との境界部に存在する行道山(四○三・一m)や谷上山(四五五・五m)などの低い山地あるいは丘陵が分布する。これらはいずれも主として和泉層群の堆積岩より成り、全体的に小起状の穏やかな地形となっている。
 高縄山地周辺に発達する丘陵は、主として花崗閃緑から成り、ところどころに石英斑岩の岩脈や安山岩質の岩頸が分布している。特に、後者は侵食に対する強い抵抗性を示すことから、松山市街地の北にそびえる御幸寺山(一六四・六m)や北条市街地にそそり立つ恵良山(三○二・一m)、北条鹿島などの小高い部分を形づくっている。また、松山平野の北部には、経ヶ森(二○二・三m)、大峰ヶ台(一三三・三m)、城山(勝山・一三一・一m)、弁天山(一二九・四m)などの分離丘陵が存在している.これらはいずれもほぼ二○○m以下の海抜高度をもっていて、古生界の領家変成岩類や中生界白亜系の和泉層群などから成る大峰ヶ台や城山の南部、弁天山を除いては、大部分が花崗閃緑岩を主体とする地質である。

 内帯の平野と海岸

 県内の主な平野はすべて中央構造線の北側に分布しており、重信川・石手川の下流部に発達する松山(道後)平野、蒼社川下流の今治平野、中山川・加茂川下流の周桑・西条(道前)平野、国領川下流の新居浜平野などのほか、北条市付近の北条(風早)平野、川之江市・伊予三島市・土居町にまたがる宇摩平野などが発達している。これらの平野はいずれも扇状地性で、一部に台地化した古い扇状地が存在している。
 海岸線は一部を除いて単調な砂浜海岸で、浜堤とよばれる微高地が良好に発達している。西条市から東予市にかけての地域のように遠浅な海岸では、江戸時代から何回かにわたって干拓が進められてきたが、最近は工業用地造成などのため埋め立てが進行している。