データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

二 人口の分布と密度

 偏った分布

 愛媛県民の約七〇%は県内一二市に居住している。つまり都市人口が三分の二を超えているが、このうち最も多いのは県都松山市で、昭和五五年に四〇万を超え、県内人口の四分の一以上を占め、四国でも第一位の人口を誇っている。新居浜市・今治市がともに一〇万以上で、これら三市で四四%と過半近くを占める。そのほかの九市は、いずれも三万から七万規模の小都市である。県内の都市を人口の規模と順位からみると、松山市がとびぬけて大きく、それは新居浜市や今治市の三倍以上である。このように一位の規模がとびぬけている都市をプライメイトシティというが、規模の較差が著しいことは、一般に経済的に発展途上にある地域にみられる特徴で、本県の場合もその例外ではない。
 これに対して、五八町村からなる郡部の人口は、四七万余を数え、総人口の約三分の一を占める。なかでも二万以上の町は、松山市の南にある松前町と東にある重信町で、ともに同市郊外のベッドタウンとして住宅地化が急速に進み、人口が増加した。このほか一万人台の町は、宇和町をはじめ、土居町・津島町・吉田町など四町を数える。人口の極めて少ない村は、別子山村の三九七人で、内陸部では愛知県の富山村の二三二人についで全国第二位の人口の少ない村として知られる。このほか瀬戸内海の離島の村として魚島村は五一五人を数えるにすぎなく、東京都の離島である青ヶ島村一九二人、御蔵島二二五人、利島村二七八人についで離島では第四番目の人口の少ない村として有名である(図3-2)。

 人口集中地区

 人口の都市への集中の程度を示すものとして人口集中地区調査がある。人口集中地区(Densely Inhabited District =DID)とは、国勢調査の調査区のうち、原則として人口密度がk㎡につき約四、〇〇〇人以上のもので、市区町村の中でそれらがたがいに隣接して、その人口が合計して、五、〇〇〇人以上となる調査区の集まりをいうのである。つまりDIDは市街地人口を示すものといえる。昭和三五年の国勢調査から人口集中地区が設定され、本県でも一六市町に一八地区の設定をみた。この時のDID人口は四四万五、五四九人で、県内人口の二九・七%を占めた。また、その人口密度は、県内平均で一k㎡当たり八、二五一人で、地区以外の平均人口密度一八九人に対して四四倍にも達する稠密さであった。
 昭和五五年のDID人口は六二万五四八人であり、これは、県内総人口の四一・二%に相当する。DID人口の割合の高い人口の市街地集中は松山市で最も著しく、その割合は七四%に達する。新居浜市の六一・三%がこれに次ぎ、三瓶町・宇和島市・今治市・八幡浜市が五〇%以上である。しかし、本県の場合、DIDへの人口集中度は比較的低く、田園都市的な小都市が多いといえる(表3-3、図3-2)。

 低い人口密度

 昭和五五年における国勢調査の結果からみた県内の人口密度は一k㎡当たり平均二六六人で、全国平均の三一四人に比べてやや低い。これを市郡別にみると、市部の六〇三人に対して郡部は一一九人と著しく低い。郡部で特に低いのは上浮穴郡三〇人、宇摩郡八四人、北宇和郡九二人、東宇和郡九四人などである。これらに対して、西宇和郡は二四四人、越智郡二三五人、伊予郡二二六人など沿岸・島しょ地域及び都市近郊の郡部はやや稠密である。
 市町村別にみた人口密度の最高は、今治市の一、六五一人、ついで松前町一、三九七人、松山市一、三八八人と続く。五〇〇人以上の高密度地域は、川之江市から新居浜市・今治市・松山市とを結ぶ東予・中予地域の都市の発達した商工業地域である。このほか、とび離れて越智郡の生名村・伯方町と宇和島市がある。一方、四国山地では五〇人未満の低密度地域が多く、特に別子山村の五人は最も低く、面河村九人、柳谷村一八人、美川村二八人が低い。また、五〇から一〇〇人の低密度を示すところも、これらに隣接した山間地を多く含む地域に分布する。
 国土面積から林野面積をさし引いた可住地面積による人口密度を求めて図化したのが図3-3である。県内総平均が一k㎡当たり八八二人で、総面積による人口密度二六六人の三・三倍に達する。二、〇〇〇人以上の稠密な地域は松山市の二、四五一人を最高に、今治市・新居浜市がこれにつづく。一、〇〇〇人以上の地域は、生名村の一、五九〇人を筆頭に松前町・川之江市・宇和島市・伊予三島市・波方町であり、市部及びその周辺の町で高い。一方、五〇〇人未満の低密度地域は、林野面積の割合が高い宇摩郡の山地、上浮穴郡・伊予郡の山地、喜多郡・東宇和郡・北宇和郡などである。

表3-3 愛媛県の人口集中地区(DID)の変化(昭和35・55年)

表3-3 愛媛県の人口集中地区(DID)の変化(昭和35・55年)


図3-2 愛媛県の市町村別人口および人口集中地区(DID)の人口(昭和55年)

図3-2 愛媛県の市町村別人口および人口集中地区(DID)の人口(昭和55年)


図3-3 愛媛県の可住地面積(国土面積―林野面積)による市町村別人口密度(昭和55年)

図3-3 愛媛県の可住地面積(国土面積―林野面積)による市町村別人口密度(昭和55年)