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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

1 卸売業の分布と商圏

 卸売業の分布

 卸売機能は、一般に卸売業者の小売業者への商品の配達という形で営まれるのに対して、小売機能は、消費者が直接商店に出向いて商品を買うという形で営まれる。この機能の営なまれかたの相異は、卸売機能の勢力が小売機能よりもはるかに広い範囲におよぶこととなり、その結果として、卸売機能が少数の商業中心の都市において占められることとなる。
 県内における卸売機能の地域的分布をみると、松山市への卸売機能の集積が著しく、とくに従業者数と年間販売額で、それぞれ県内の五〇%以上を占めている。二位は今治市で、この両市を合わせると県内の年間販売額の三分の二を占め、これに宇和島・新居浜・伊予三島の三市を加えた上位都市の合計は、実に八五%近くになって、卸売機能の特定都市への集中が著しい。さらに市部の年間販売額の合計は県内の九五%を占めるほどで、郡部ではほとんど卸売機能が存在しないと言ってもよいほどである(図6―19)。
 卸売機能の地域的分布を商店集中度(可住地面積当たり商店数)、商店規模(一店当たり販売額)、売上げ効率(従業者一人当たり販売額)などから見ると、商店集中度では郡部より市部が高く、郡部では一k㎡当たり一店以下であるのに対して、市部ではほとんど一店以上で、とくに松山市と今治市では約一〇店と際立って高い。商店規模ではやはり市部が大きいが、郡部でも大きな値を示すところがあって、地域的な差異はそれ程顕著ではない。このなかで松山市が最高値を示している。これとほぼ同じ値を示すのが伊予三島市と伊予市であって、前者は紙・紙製品、後者は水産加工品の卸売業者の規模の大きさによる。売上げ効率では、商店の規模にみられるような市郡間の格差がなく、伊予三島市と伊予郡が高く松山市は六位である。伊予郡が高いのは、砥部町に県内の農協連の卸センターが最近立地したことによる。

 仕入圏

 卸売業の仕入先を見ることは、その地域が他のどの地域の経済圏に組み入れられているかを知るのに都合がよい。県内の卸売業の仕入先の構成比では、自県内からが三分の一ほどであって、仕入れの多くを県外に依存している。県外のうち大阪府からが全体の二七%と最も多く、香川県・東京都がこれに続く。これは、愛媛県の卸売業が広域的には大阪府と東京都の経済圏に、地域的には高松市の圏域に属していることを示している(表6―17)。
 同じく品目別の仕入先構成比では、大阪府への依存度がとくに高いのは、繊維品をはじめ、化学製品・建具・家具・什器などで、東京都との間では医薬品・化粧品・機械器具などの依存度が高い。香川県に対しては、食料・飲料・鉱物・金属材料などが高いが、反対に県内への依存が高いのは農畜産物・水産物となっている。したがって、県内の卸売業は、第一次産業生産物は主に自県内から仕入れるが、それ以外の商品の多くは県外に依存するという特色をもっている。

 卸売商圏
      
 商品の仕入れでは、他都府県への依存度が高いのに対して、販売先では、反対に自県内八七%と圧倒的に高いという際立った特徴を示している。これは、愛媛県の卸売業が他都府県から商品を仕入れて県内の小売業に販売するという、きわめて地方的な機能しかもっていないことを物語っている。このなかで他県への販売が幾分あるのは、衣服・身の回り品と再生資源である。前者については、今治の縫製関係の卸売業者の他県外への販売があることによっている。ちなみに、今治市には全国的な販売網を持つ繊維商社が九社を数え、それらは糸友会をつくって、原料糸の卸売や製品の買上げを行っている。

図6-19 愛媛県における卸売機能の分布

図6-19 愛媛県における卸売機能の分布


表6-17 愛媛県の卸・小売業の仕入先(昭和54年)

表6-17 愛媛県の卸・小売業の仕入先(昭和54年)