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愛媛県史 地誌Ⅱ(東予西部)(昭和61年12月31日発行)

四 今治市の都市計画

 総合都市計画

 今治市の都市計画は、県下で最も早く大正八年(一九一九)の旧都市計画法に基づいて、翌九年に適用が検討され、昭和二年に適用指定され、昭和四年には近見・旦局・立花を含む地域が都市計画区域として加わった。これは繊維工業に占める今治市の重要性と、工業立地の無計画性によるスプロール化の是正を主な目的としたものであった。
 戦後は戦災復興計画の基本方針により、昭和二一年今治市復興都市計画がたてられ、街路と区画の整理が行われ、続いて昭和二三年には公園緑地、墓苑の整備が決定、実施された。
 昭和四三年に新都市計画法が施行されるに伴い、同四八年市街化区域と市街化調整区域が線引されると共に朝倉村・玉川町・大西町・波方町の一部を含む「今治市広域都市計画区域」が決定され今日に至っている。
 この広域都市計画区域は面積で約三七%、人口で約一三%の増加になるが、玉川町・朝倉村は道路連絡、繊維工業、住宅の拡大立地を、波方町は流通関連、大西町は造船工業関連をそれぞれふまえての広域圏の設定であって、将来の行政合併をも予見するものである(表2―65・2―66)。


 用途別土地利用

 従来の都市計画用途別土地利用と比べると目新しいものとしては、第一種(三・六%)、第二種住宅専用地(一一・一%)が設定されたのと、工業専用地(一・六%)と近隣商業地域(四・二%)が設定されたことであろう。
 第一種住宅専用地としては近見山南麓の宮下町一帯があてられているが、これは従来からの住宅適地であり、市の中心地へも近い距離にあるためである。工業専用地としては波止浜・大西の造船工業地区と龍登川河口の木材団地があてられている。準工業地域としては頓田川下流左岸、及び桜井地区の国道一九六号ぞいが新しく設定されており、すでに一部に工場立地がみられる。近隣商業地としては古くから独立した市街地を持っていた桜井及び大西町の人口集中地域があてられている。
 公園・緑地・レクリエーション地区は市のほぼ南部と北部に設定され、共に国立公園地帯である。南部の桜井レクリェーション地区は比較的よく整備されているが大規模な旧塩田跡や大崎海岸後背地の活用がはかられるべきである。北部は近見山・糸山、小島・来島・馬島の国立公園地帯を中心とするものであるが、施設は不十分で本・四架橋を目標にした対応が必要な場所である。
 市街化区域内には大正三年(一九一四)市内で最初に開設された吹揚公園をはじめ三〇の公園がすでに開設されているが、吹揚公園を除きすべて児童公園である。吹揚公園は今治城天守閣も再建され、各資料館も充実しており、最近は美術館も開設された。倉敷市の大原美術館は年間約八〇万人の入場者があるが、観光施策の一環としてもその充実が期待される。新しく事業中のものとしては、市街地調整区域の桜井地区に桜井総合公園(六・五ha)、町谷地区に鹿の子池公園(四・七h朝倉村を含む)があり、本格的公園として期待されるところが大きい(図2―48)。


 交通施設

 道路新設については国道バイパス建設事業がその最大のものである。これは国道一九六号の渋滞緩和と、将来瀬戸内海大橋の完成に伴う連絡道路造成を目的としたもので、宅間・長沢間一三・四㎞、幅員三〇m四車線の道路計画で、昭和五一年着工、現在すでに宅間地区の一部が使用されている。昭和六二年には国道三一七号と高橋・小泉地区で交差する地点まで完成の予定であり、バイパスに結ぶ駅裏再開発地区からの直交線や、波止浜に至る国道三一七号との直交線が計画道路として設定されている。この道路は市街地区域の西端を通過するが付近にはタオル工場も多く、その沿線は準工業地域としての土地利用が計画されている。
 バイパスの完成は今治市の交通系統を大きく変化させるもので、蒼社川以南においても国道一九六号と結ぶ連絡道路が建設されるはずであり、すでに新港の流通、工業団地とを結ぶ浜窪線は国道一九六号を越えて西に向かっている。
 このような道路交通状況のもとで文字どおりのバイパスに終わらせず、今治市街地へ人の流れを引き寄せるためには駐車場の増設整備が不可欠の要件である。現在市内の公営駐車場は広小路路上一〇〇台、港務所前一七八台、市庁舎内一三四台、駅前一五台で合計四二七台分しかなく、民間大型店、商店街店の駐車場一二六六台と合わせても二〇〇〇台に程遠い。思いきった大駐車場の設置が特に望まれるのである。
 鉄道交通については「国鉄予讃本線連続立体交差事業計画」が唯一最大のものである。今治市街地においては立体交差している道路は、県道今治―丹原線のみで他はすべて踏切直交するもので、特に国道一九六号・三一七号の渋滞は深刻で鉄道の立体化は市民の悲願でもあった。
 昭和五八年事業認可され、路線部分は今治市辻堂から高部まで約七三九〇m、高架部分は蔵敷町二丁目から石井一丁目まで約二六一〇m、立体交差箇所一五箇所となっている。更に駅舎の新築、駅前・駅裏の整備、再開発を伴うものであり、今治駅周辺は面目を一新することになろう。交通流の迅速化の効果ははかり知れないものがあり、すでに宮下町付近で工事が進捗している(写真2―32)。
 これらの諸事業の外に防火地区指定、整備や、昭和六五年までに、人口密集地域のほぼ全域で完備される下水道事業などが都市計画の主たるものである。

表2-65 今治広域都市計画区域の現況(昭和59年4月1日現在)

表2-65 今治広域都市計画区域の現況(昭和59年4月1日現在)


表2-66 都市計画用途地域の面積変遷

表2-66 都市計画用途地域の面積変遷


図2-48 今治広域都市計画区域と用途地域図

図2-48 今治広域都市計画区域と用途地域図