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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

二 農業構造改善事業


 愛媛県における農業構造改善事業

 この事業は、農業基本法をうけて、自立経営の育成と協業の助長を目途として、労働生産性の向上、農地保有の合理化および利用の改善、高度な農業技術と農法の導入および資本装備の高度化、適地適作目についての主産地形成などを通じ、農業の飛躍的近代化を図ることをねらいとして、三七年から開始されたものである。(資料編社会経済上二三七頁)
 愛媛県における構造改善事業をみると、表6-1に示したように三七年から四四年までの実施地域は五六、実施地区は九八となっている。地区によって基幹作目を複数でとっているところもあるので、これを延地区数でみると、一二一地区のうち、ミカン(夏ミカンを含む)をとりあげたところが六八地区、全体の五六%を占めている。これを、同じく三七年から四五年までの事業費についてみると、ミカンの比重が一層高いことがわかる。表6-2のように、総事業費五三億二、〇〇〇万円のうち、ミカン関係が三九億六、〇〇〇万円で、実に全体の七五%を占めている。
 このように、愛媛県の農業構造改善事業は、第一次でみるかぎり、柑橘を主体とした構造改善事業といってよい。そこで、ミカン(夏ミカンを含む)を主体とした事業の内容を、三九億六、〇〇〇万円の内別けから眺めておく。この中では、もっとも多いのが農道の一〇億八、〇〇〇万円(二七%)、ついでミカン選果所九億三、〇〇〇万円(二四%)、畑地かんがい七億一、〇〇〇万円(一八%)、ミカン園造成改良四億三、〇〇〇万円(一一%)、共同防除施設四億一、〇〇〇万円(一〇%)などとなっている。(表6-3)
 これらをみると、地域で多少の差はあるが、事業の柱として、基盤整備、生産近代化施設、流通近代化施設の三つをあげることができる。第一の基盤整備は、補助対象事業として、集団ミカン園造成改良、一般農道、畑地かんがいなどが含まれるが、その他に交換分合、索道なども見うけられる。規模拡大を目的としたミカン園造成は、五~二〇haがほとんどで、三〇ha以上の規模は三地区を数えるにすぎない。
 第二の生産近代化施設は、定置配管による共同防除施設、トラクター、動力防除機、機械格納庫などがおもなものであるが、共同防除施設が圧倒的に多い。注目すべき点は、共同防除とかん水の兼用施設が開発され、一部で導入され始めたこと、リンゴなどに利用されているスピードスプレヤーがミカン経営にも入り始めたことである(もっとも、防除の主流にはなりえなかったが)。
 第三の流通近代化施設は、ミカンの集出荷所(選果場、中継集荷所)、貯蔵庫、加工所などで、愛媛県の場合は、選果所がもっとも大きな割合を占めている。流通近代化施設には、地域を超える事業(広域施設)もかなりみられる。(愛媛県農林水産部「第一次農業構造改善事業の実績」昭和四六年三月参照)
 構造改善事業が、愛媛県のミカン産地にあたえた効果は、第一に、この事業で、小規模ながらミカン園の造成が各地で進められ、それが主産地形成の拠点となったこと。第二に、市町村が果樹経営の近代化をはかろうと積極的に取り組み、実施地区にかぎれば、農道を中心とした基盤整備が徹底して行われ、大型機械の利用できる体制がある程度整えられたこと。第三に、この事業で、選果場の統合近代化が各地で進められ、広域集荷・大量出荷体制への移行が急速に進められたこと、などである。いずれにしても、この事業が、愛媛県のミカン産地にあたえた影響は、直接間接きわめて大きなものがあった。
 なお、この農業構造改善事業は、三七年から四五年にわたって実施された第一次、四五年から五六年にわたって実施された第二次に引き続き、五三年から開始される新農業構造改善事業(前期および後期)に受け継がれる。(資料編社会経済上二四一頁)




表6-1 構造改善事業実施地区 (愛媛県)

表6-1 構造改善事業実施地区 (愛媛県)


表6-2 基幹作目別事業費 (愛媛県)

表6-2 基幹作目別事業費 (愛媛県)


表6-3 事業種目別事業費 (ミカン・夏ミカン、愛媛県)

表6-3 事業種目別事業費 (ミカン・夏ミカン、愛媛県)