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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

第一節 内水面漁業制度の変遷


 漁業制度の変遷

 明治五年神山県から鰻の採取制限措置として、石畔をつくるために井関の石や川の石垣の石を抜きとることを厳禁する旨の布告がなされているが、県規則として内水面漁業が規定されたのは、明治一〇年の漁場及営業取締収税仮規則が最初である(資料編第六章5参照)。
 本規則第七条で湖川で漁業を営む者はすべて海面に準じて処分することを原則とし、旧慣によって証券を下付のうえ、五か年の期限つきで漁場を貸し渡しすることとし、旧慣のないところは公の入札で貸し渡すこととされた。この際漁場税は五か年平均の一か年の収獲金額の百分の三、営業税は同じく一か年の平均収獲金額によりこれを七等級に区分してそれぞれ税を徴収した。
 明治一二年制定の漁業規則においてもおおむね同様の規定であった。
 明治一八年河川漁事制限規定(資料編第六章6参照)が布達せられ ①鮎児漁業の一月一日より五月末日までの期間禁止 ②爆薬、注毒採捕の禁止 ③肱川筋柚木村の一部に禁漁区を設定④肱川における瀬違漁及び懸ヶ鮎漁の禁止 ⑤肱川本支流の一部で一定期間を設けて禁止漁具漁法を規定するなどの措置が初めてとられた。
 明治一九年愛媛県水産取締規則が制定せられた(資料編第六章7参照)。
 この規則では現愛媛県内に九水産区を設け、各水産区に組合規約を設け県の認可を受けさせるよう規定したが、河川は例外とされた。しかし、第一三条で河川漁事を定義し、網漁・築漁・瀬張漁・釣漁・雑漁に区分するとともに取り締まり上必要な場合は海面に準じ、組合を設け、頭取、取締を設置できるようにした。このほか、前述の河川漁事制限事項を規則中に規定し、さらに鵜使漁・鵜竿及び鵜縄鮎漁の周年禁止が設けられた。また面河川水系でイダ及びアメノウオについて釣り以外はそれぞれ四月一日より五月末日までと、一〇月一日より同月末日までの禁止期間が設けられた。そして漁業採藻者が営業するときは郡役所に出願し鑑札を申し受け、営業中の携帯が義務づけられた。
 明治二二年漁業取締の制定によって、肱川の禁漁区や鮎の禁止期間などの規定並びに面河川におけるイダの禁止期間の規定は削除された。また漁業を営むものは漁具・漁場・漁期を明記した願書を所轄郡長に願出許可をうけるよう義務づけられた。
 明治三二年愛媛県水産取締規則が制定され、淡水業について簗瀬張は一か所毎に、網・釣り、雑漁は一人毎に郡役所より鑑札の交付をうけて営業中はこれを携帯することが義務づけられた。営業者にして本県内に住所を有する者はその地元地区の組合へ加入が義務づけられているが河川営業者は例外規定となっている。
 さらに明治三七年の愛媛県漁業取締規則で、鵜飼漁業が知事許可漁業に明記せられるとともに再び肱川及び面河川筋の鮎を一月一日~五月末日まで禁止期間を設定したほか、面河川筋の久主と柳井川とに介在する小鮎瀬上流一町下流四町の間の鮎の禁漁区を設けた。また河川において通路を遮断して行なう漁法についても川幅の五分の一以上の魚道の開通措置を規定した。
 明治四〇年の漁業取締規則の全面改正によって、鵜飼漁業のほか鰻畔漁業も知事の許可漁業とした。
 大正二年には漁業取締規則が再度全面改正せられ、宇和川筋の渓筋村に鮎の禁漁区が追加せられたほか、禁止漁業として鵜飼・鮎空掛釣・瀬乾漁(瀬替漁を含む)が規定された。このほか非漁業者の漁具漁法が具体的に明記せられ、①干潟漁 ②投網 ③釣 ④抄網 ⑤鰻挾 以外は採捕することが禁じられた。また鮎は一一月一日~五月末日まで、アメマスは一〇月一日より一一月末日までの禁止期間が設けられた。
 大正七年には漁業取締規則の一部改正により肱川筋に禁漁区が新設されたほか、鮎の禁止期間が一月一日~五月三一日までに改められた。
 昭和二年漁業取締規則の全面改正が行なわれ、知事許可漁業として新たに河川における曳網漁業が明記されたほか新たな禁漁区として、面河川筋・宇和川筋・肱川筋・石手川筋の一部が規定された。また、イダが三月一〇日~五月一〇日まで禁止期間として追加され、さらに非漁業者の漁法に筌が追加されることとなった。
 昭和二四年昭和の漁業法が制定せられたが、その第一二七条により、河川漁業の免許は第五種共同漁業権とし、免許の必須条件として、増殖を行なうことが明記された。そしてこの新漁業法第六五条第一項の規定に基づき、昭和二六年九月一日、愛媛県規則第五五号によって、愛媛県内水面漁業調整規則が新しく公布せられ同日施行となった。従前の規定との主な相違点を列挙すると次のとおりである。
 ①まき網漁業・鵜飼漁業・食用加える漁業・空釣りなわ漁業などは漁業権又は入漁権に基づいて行なう以外は知事の許可を要すること。②漁業権漁業以外で知事の許可を要しない漁業を定義づけたこと。③許可期間を従来の一〇年から三年としたこと。④必要に応じ漁業許可の定数を設けたこと。⑤有害物の遺棄漏せつを禁止したこと。⑥アメノウオ一〇月一日~一月末日、食用カエル六月一五日~七月一四日までを禁止期間とした。⑦マス一五㎝以下、ウナギ二五㎝以下の体長制限を規定した。⑧広見川・肱川・仁淀川筋における潜水し、やすを使用する漁法を禁止した。⑨加茂川・中山川・広見川筋に新たな禁漁区を設定した。⑩遊漁者の行なえる漁法として徒手採捕・手釣・竿釣・たも網・抄網・筌・投網を規定した。⑥試験研究など特別な理由により本規則で禁止制限した漁具漁法を行使する場合の特別採捕許可の規定を設けたことなどである。
 昭和四二年新たに愛媛県内水面漁業調整規則を制定し、目的に水産資源保護法の遵守を折り込むとともに、知事許可漁業の種類を一括明記した。これらの概要並びにその後の主な改正点については第二節において記述したとおりであるので省略する。