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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

三 三崎半島伊予灘海域における魚の大量死


 伊予灘の魚異常死

 昭和五六年九月中旬から伊予灘側の瀬戸町地先沿岸を中心として、マイワシなどの魚類異常へい死が一〇月上旬をピークとして約二か月間つづく現象が発生した。このようなことは従来あまり例を見ないことだけに大きい問題となった。一〇月一六日瀬戸町漁業協同組合(組合長土居富士吉)からの要請により、水産試験場及び八幡浜地方局が現地に急行し、付近一円海域の水温・塩分量・酸素量などを調査したが、異常は認められなかった。ただ採取した魚からは連鎖球菌が検出された(衛生研究所で同定)。
 次いで一〇月二七日~二八日・一一月九~一〇日・一一月一九~二〇日にそれぞれ水産試験場が現地で水質調査を行なった結果異常はなかったが、採取魚からは前回同様連鎖球菌が検出された。まだ一〇月二三日放射能、重金属、毒物、塩素などについて県公害技術センターと衛生研究所で検査したが、。何れも問題となるものは認められなかった。この連鎖球菌はマウスの実験から人体への影響は全く無いことが実証されている。
 瀬戸町議会は一〇月二七日の全員協議会で、魚の大量死の原因が究明されるまで伊方原発三号機増設に反対することを決議し、同町は翌二八日瀬戸町魚類大量死対策本部(本部長瀬戸町長)を設置して本問題に対処することとなった。一一月一九日現地における連鎖球菌の説明会(高知大学教授楠田理一、愛媛県水産試験場長片岡光一他出席)で、へい死の直接原因が同球菌によることを理解したとして同日対策本部は解散され、さらに町議員の全員協議会も三号機の増設に協力することを申し合わせた。
 これより先一〇月三一日県は魚類のへい死原因究明と三崎半島周辺海域における漁場環境を科学的見地から調査解析し、当海域における漁業資源の保護育成に資することを目的とした「三崎半島伊予灘海域漁場環境調査研究グループ」(代表愛媛大学教授伊藤猛夫他七名で構成)を設置した。水産試験場では、さらにひきつづき一二月一七日と翌年一月一一日それぞれ採取魚の細菌検査を実施したが、いずれも細菌は検出されず魚のへい死は一応終えんしたものと判断した。
 伊方原発反対八西連絡協議会では、一一月三日と一三日に三崎半島伊予灘海域漁場環境調査研究グループに対し、七項目と四項目の公開質問状を送付したが、これに対し同研究グループは一一月一三日付で回答した。同協議会はまた一一月七日付で知事・松山海上保安部長・県警本部長に対し四項目の公開質問状を送付した。
 研究グループの第一回検討会が一一月二日、第二回が一一月三〇日開催されたが、この結果 ①放射能、水温、塩分、農薬などはへい死の直接原因ではない。②へい死の直接原因は連鎖球菌の感染によるものである。③この連鎖球菌は人体に対する病原菌とは関係がなく無害であるなどの結論を出した。しかしながら、何故この菌が発生し大量へい死に至ったかという機構については、究明するに足る資料がないとして解明できなかった。しかし、この魚の大量死現象の究明と漁場環境の実態把握の見地から五七年以降五九年現在もひきつづき調査中である。