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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

第二節 市場④


 卸売市場の整備と統合

 漁獲物は漁港に水揚げされ、産地卸売市場を経て消費地に輸送され、消費地卸売市場から、小売の手を通じて家庭など最終消費者に届くのが通常のコースである。この流通の中核的拠点となるのが卸売市場である。従来は中央卸売市場法に基づいて、拠点的な中央卸売市場のみ整備と規制が行なわれた。高度成長期を経て、水産物需要は増大し、全国的に消費パターンは均一化した。このため交通機関、情報化社会などの新しい流通情勢に対応して、生鮮食料品の流通活動を促進させる目的で、昭和四六年「卸売市場法」と、この適正な運用を図るため「卸売市場法施行令」が制定された。これによって卸売市場は「中央卸売市場」、「地方卸売市場」、「その他の卸売市場」に分類整理され、長期の展望に立って、各流通圏ごとに適正な配置と整備、統合が図られることになった。
 地方卸売市場の施設の最低規模は卸売場面積二〇〇㎡以上(これ以下はその他の市場)で、この規定(卸売市場法第五五条)に従って昭和四八年二月、一九の地方卸売市場の開設が知事から許可された。この地方卸売市場のうち、昭和四七年からの第一次愛媛県卸売市場計画に従って八幡浜市の四つの地方卸売市場、すなわち八幡浜地方卸売市場、八漁協地方卸売市場、玉岡水産地方卸売市場、太陽地方卸売市場が八幡浜地方卸売市場に統合され、また昭和五二年からの第二次計画によって松山市中央卸売市場に水産市場が開設された。現在昭和五七年からの第三次整備計画が進められている。この計画書によると、昭和五三年を基準年として、目標年度の昭和六五年までの間に、生産量(海面・養殖を含む)の増加約五万t、また人口増加と一人当たり消費量の増大で、約二万tの需要増が見込まれている。従って県全体の卸売市場の取扱量は、目標年度には約三割増しの一九・八万tと推定され、なお水産加工品などは市場外流通が多いが、卸売市場の整備によって市場供給率が増大することになれば、この数字をさらに上回ることが想定される。このような取扱量の増加は、従来のような小規模市場では、施設の老朽化、狭あい化のために対応できない。このため第三次整備計画では、地方卸売市場は一五から一二ヘ、その他の卸売市場は三〇から二五に整備、統合されることになっている。

 卸売市場の搬入、仕向け

 第三次愛媛県卸売市場整備計画が作成された際、昭和五三年を基準年と定め、各市場ごとに取扱量・搬入・仕向けの内容と仕向け地などが詳細に調査されている。昭和五三年の卸売市場は、地方卸売市場(卸売場二〇〇㎡以上)が一六、その他の卸売市場三一、合わせて四七で、なお産地、消費地の分類では、産地市場二〇、消費地市場二七となっている。
 流通圏を東部(東予)、中部(中予)、南部(南予)の三つに区分して、各卸売市場の取り扱いの項目ごとに、東部・中部・南部の各流通圏に取りまとめられている。これによると、南部(流通圏を略、以下同様)の取扱量が最も多く、県全体の五七%で過半数を占め、次いで東部二七%、中部一六%の順である。取扱量のうち地元生産者の出荷する、いわゆる水揚分は東部の七二%が最も高く、南部は五五%、中部はわずかに三九%に過ぎない。搬入分のうち三流通圏間の移動は、取扱量の多い南部からが最多である。中部へ東部からの搬入、南部へ中部からの搬入数量は極めて少ない。県外からの搬入比率は、中部が最も高い。県外の搬入先は三流通圏共、四国が最も多く、次いで九州の順で、第三位は東部、中部では中国地方から、南部は阪神からの搬入である。仕向け先は、それぞれの流通圏内への仕向けが首位を占めているが、その比率は東部が九〇%で最も高く、中部は七三%である。南部は県外への仕向けが四一%を占め、中部、東部への仕向けを大幅に上回っている。南部から県外への仕向け先は、阪神が最多で三〇%を占め、九州が一四%、四国一三%の順で、阪神との結び付きが特に強い。
 さて、卸売市場別の取扱量は、八幡浜地方卸売市場が最も多く、三万八二九〇tで、ほぼ東予二三の卸売市場の取扱量に匹敵し、県全体の二六%を占めている。搬入量、仕向け量は共に県外が、南部を含めた県内を上回っている。次いで多いのが西条漁協地方卸売市場であるが、これはのりが生換算されているためである。第三位は南宇和郡西海町にある福浦魚市場(漁協)で、ここの搬入分が多いのは、ハマチ養殖向けの餌料・煮干し・節類(サバ節、イワシ節)の水産加工の盛んなことによるものである。南部流通圏のうち南宇和郡にある卸売市場は、深浦地方卸売市場を除いては餌料向けが圧倒的に多い。第四位は今の松山市中央卸売市場水産市場の前身である松山市水産物地方卸売市場である。取扱量一万二、八〇九tのうち、消費地市場にふさわしく、生産者出荷はわずかに一四%で、搬入分は県外のうち四国からが最多で、南予がこれに次いでいる。

表12-15 水産物卸売市場整備計画

表12-15 水産物卸売市場整備計画


図12-30 水産物卸売市場配置図

図12-30 水産物卸売市場配置図


表12-16 生産量の伸び率

表12-16 生産量の伸び率


表12-17 水産物需要見通し

表12-17 水産物需要見通し


図12-31 水産市場入荷状況

図12-31 水産市場入荷状況


図12-32 水産市場仕向状況

図12-32 水産市場仕向状況


表12-18 卸売市場取扱量の階層分布

表12-18 卸売市場取扱量の階層分布


図12-33 昭和53年卸売市場入荷数量

図12-33 昭和53年卸売市場入荷数量


表12-19 卸売市場の概況(昭和53年)(その1)

表12-19 卸売市場の概況(昭和53年)(その1)


表12-19 卸売市場の概況(昭和53年)(その2)

表12-19 卸売市場の概況(昭和53年)(その2)