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愛媛県史 社会経済3 商 工(昭和61年3月31日発行)

一 諸 説

 産業構造からの視点

 愛媛県の産業経済の移り変わりを最も端的に表しているのが産業構造の変化である。産業構造とは、特定地域の経済内部における産業部門間の構成のあり方をいう。一般に、産業構造は、経済が発展するにつれて、その比重が第一次産業(農業など)から第二次産業(製造業など)へ、そして第三次産業(商業など)へと移っていくことが知られている。しかしながら、全国の各地域は、産業構造変化の一般的傾向に従いながらも、それぞれの社会経済的ないし地理的条件に応じて、独自の産業構造を歴史的に生成させ、その変容をたどってきた。また、それゆえ産業構造の変化は、生産力そのものとともに人口分布などの地域的構造をも大きく変化させてきた。
 そこで、本編では、明治以来の目覚ましい経済の発展につれて、愛媛県の諸産業の構成がどのように変わっていったか。すなわち、今日の愛媛県の特色ある産業構造が歴史的にどのように形成されてきたかを振り返ってみたい。叙述に当たっては、できるだけ統計資料や産業史料を利用して具体的に跡づけることに努めたが、そうした資料が得られない場合は概況を説明するにとどまった。なお、産業構造の変化は、農業・工業・商業ごとにとりあげていくこともできるが、それについては、それぞれの編が設けられて詳述されているので、ここでは、それら諸産業の相互の関係をまず大まかに観察することにする。しかも、編別構成の都合上、視野を主に商工業に限定することをあらかじめ断っておきたい。
 最初に、主題に入るに先立って、以下において藩政期の伊予の産業概況をみておこう。