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愛媛県史 社会経済3 商 工(昭和61年3月31日発行)

一 藩営専売制度の成立過程

 専売制とは

 江戸時代、諸藩が財政の窮乏を救済する手段として、商品の販売を独占した制度である。最初各藩は、町人階級に株仲間組織などの特権を与え、その生業を保障する代償として、運上や冥加金を課すに過ぎなかった。ところが、町人階級が生産者と消費者との間に介在して大きな利益を獲得するのを羨み、藩自ら売買にたずさわり、且つその利益を確保するために、民間における自由売買を禁止するに至った。
 専売制度の型式には領内配給独占と領外移出独占があった。江戸中期以後、交通が発達して地方物産の領外における販路の拡大をみた。諸藩のうちには所謂国産の増加を計ると共に、その領外移出を独占的に行うものが増えてきた。
 伊予国では、宇和島藩の蝋専売がよく知られており、昭和八年(一九三三)の堀江保蔵著『我国近世の専売制度』に「宇和島藩の蝋専売」が所収されている。同書の付録には「藩営専売制度一覧表」があり、全国の専売制度の状況がわかる。今治藩の木綿、松山藩の塩、大洲藩の紙、吉田藩の紙、宇和島藩の紙・蝋・鯣が記されている。
 なお、その後の研究成果を加えたものが『日本史辞典』(昭和四一年 角川書店発行)の付録に「藩営専売表」がある。これによると、松山藩の塩・紙・楮・絣、今治藩の楮・紙、西条藩の奉書紙、宇和島藩の紙・晒蝋・青蝋・寒天、吉田藩の紙・櫨蝋、大洲藩の紙・櫨実・蝋とある。

表工1-5 伊予国近世における専売制度

表工1-5 伊予国近世における専売制度