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愛媛県史 社会経済3 商 工(昭和61年3月31日発行)

四 その他の主要企業

 戦前の主要企業

 〈伊予汽船〉 『伊予市誌』(昭和四九年)によると、明治二八年(一八九五)、それまで長浜に本店を置いていた肱川汽船が郡中に本店を移し、伊予汽船株式会社と改称(資本金五〇万円)、同二九年伊予丸を新造して東京~鹿児島の航路を開いた。また以前からの持船肱川丸(第一~第四)をもって大阪~日向~細島の航路を開設。いずれの航路も郡中に寄港させたという。しかし、「不況の影響を被った上、経営上の問題も多く、重役と株主間にも意見の衝突を起こし、更に船舶の破損も重なって、遂に明治三四年解散」したとされている。『大阪商船株式会社八十年史』によると、同社は明治三八年一二月二八日付で伊予汽船から第二肱川丸(二七三トン)、第三肱川丸(二九〇トン)、第四肱川丸(三五五トン)の三隻を買い入れており、『伊予市誌』の記述と符合する。なお、『大阪商船会社五十年史』に明治二〇年代初めのこととして「愛媛県の伊予汽船は第一肱川丸、第二肱川丸をもって設立せられ……」とあるのは、おそらく前述の肱川汽船の誤りであろう。伊予汽船の盛衰史は舟運全盛時代における長浜・郡中の地位を物語るものである。
 〈瀬戸内商船〉 この会社の前身は明治四一年創立(『愛媛県誌稿』では四〇年八月)の東予運輸汽船(本社今治町〈現今治市〉)であり、後者はさらに同三〇年七月に創立された東予汽船株式会社の事業を継承したものである。東予運輸汽船は今治~西条~多度津の瀬戸内沿岸航路、今治~尾道、今治~宇品などの航路を経営して、既述のとおり住友汽船と競争関係にあった。大正九年(一九二〇)同社は瀬戸内商船株式会社と商号を変更、本社を尾道に移した(鉄道との連帯運輸の便のため)。昭和一七年一一月、戦時運輸統合令によって、海運部門を広島県汽船(のちの瀬戸内海汽船)に移譲、一八年一月には瀬戸内運輸株式会社と社名を変更して、バス輸送を中心とする陸上運輸企業に転進した(同年四月には本社を今治市に移した)。
 〈南予運輸㈱〉  『愛媛県誌稿』によると、この会社は明治二九年六月の創立で、本社を南宇和郡御荘村大字平城(現御荘町)に置き、所有汽船、第二御庄丸・第三御庄丸及び第四福山丸をもって、平城港より南は高知県宿毛~小筑紫に至り北は岩松・宇和島・八幡浜・塩成を経て大分県佐伯に至る航路を経営していたが(大正四年九月現在)、大正一五年宇和島運輸に吸収合併された。南宇和郡の人々にとってかけがえのない船便であったものと考えられる。
 県内企業としては、このほか盛運汽船株式会社(昭和八年宇和島市において創立)、青木汽船(大正六年設立。八幡浜町(現八幡浜市)。その使用船は繁久丸で八西地域の住民に親しまれた)。八幡浜運輸(大正七年創立、八幡丸で三崎・八幡浜線を経営)、木村汽船部(今治)、村上汽船部(同)などがあった。
 県外に本拠を置く企業としては、既出の大阪商船株式会社・関西汽船株式会社(戦時中の昭和一七年瀬戸内海の各船社を統合して発足。県内では宇和島運輸、住友汽船もこれに参加した)、及び尼崎汽船部があげられる。

 戦後の主要企業

 戦後に創設された主要企業としては、県内では愛媛汽船株式会社・昭和海運・九四フェリー・四国開発フェリー・四国中央フェリー・三宝海運・愛媛阪神フェリーなど、また県外に本拠を置くものでは瀬戸内海汽船・因島汽船(創業は遠く大正一一年にさかのぼる)、防予汽船・ダイヤモンドフェリー株式会社などがあげられる。うち歴史の古い愛媛汽船株式会社と瀬戸内海汽船についてふれておこう。
 愛媛汽船株式会社は、昭和一七年一二月、海運統制令に基づく企業統合として今治近辺の旅客船(渡海船)業者が「愛媛汽船統制組合」を結成したのにはじまる。同二一年に愛媛汽船組合と改称したが構成員は同じであった。同二四年七月、海上運送法公布に伴い愛媛汽船株式会社(資本金一〇〇万円)が設立された。昭和二〇年代は木船のみであったが、昭和三四年には鋼船うきしろ(一一一トン)を建造、四〇年には旅客フェリー第一船として、みしま丸(一〇七トン)を建造。以後フェリー化を進め、近年は高速艇も運航している。
 瀬戸内海汽船㈱も愛媛汽船とよく似た経緯で創設された。戦時統合政策に沿って、広島県下でも群小業者の統合が進み、第一次統合では広島湾汽船株式会社を中心に二六社に集約(昭和一五年九月)、第二次では広島県汽船㈱を中核とする七社に集約された(昭和一七年一二月)。他の六社は、東海汽船・尼崎汽船・中央汽船・因島汽船・広島汽船及び瀬戸内商船であった。さらに昭和二〇年六月第三次統合の結果、瀬戸内海汽船が設立されたのである。当時の資本金は六〇〇万円であった。その後、順調に業容を拡大し、現在では芸予海域を中心にフェリー航路四、高速船航路五、水中翼船航路三を経営している。

表交2-51 関西汽船設立出資明細

表交2-51 関西汽船設立出資明細