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愛媛県史 民俗 上(昭和58年3月31日発行)

第二節 食     事

 食べる事は、生命を維持するための動物的な行動であるとともに、人間の最も基本的な文化の営みでもある。人間が食べたり飲んだりする物が食品であり、食品をつくる原料や素材が食料であり、食品を飲食する仕方が食制である。
 食料としての主食料・代用食料・救荒食料・副食料は地域や季節気候・身分階層などによって異なることが多かったうえに時代とともに変遷してきた。そして、その食品の調製には、炊事・醸造・製造・調理などの方法がとられてきた。主食料を煮炊きすることが炊事であり、酒・酢・味噌・醤油をつくることが醸造である。豆腐や蒟蒻は製造した。山菜・野菜・豆・芋・魚・貝・海藻などを副食品として調製した調理である。茄でる・煮る・揚げる・炒める・煎る・焼く・和える・浸す・漬ける…などの方法がとられてきた。
 毎日の食事と物日など晴の日の食事とは趣きがちがう。ことに祝祭弔事の食事は古くからの習俗を伝える。粢・団子・餅・赤飯には殊に古風がのこされていたし、宗教・呪術的な意味や社会的意義すらも見うけられたことがあった。