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愛媛県史 教 育(昭和61年3月31日発行)

3 昭和戦後期の書写書道教育

 小、中学校の書写

 昭和二二年(一九四七)「学校教育法施行規則」の公布により、戦後教育の内容や取り扱いは大きく改訂された。独立教科であった芸能科習字は、国語科の「聞くこと、話すこと、読むこと、書くこと」の四領域のうち、「書くこと」の中に含まれ、日常の言語生活経験に含まれる書写能力の育成という立場から行われた。したがって、日常生活では文字を書く用具の大部分が、鉛筆やペンなどの硬筆用具であるところから、その指導も硬筆による書写が中心で、毛筆習字は五、六年の自由研究のみとなり、必修は廃止された。しかし、中学校においては従来どおり「習字」として選択教科となり、国語科の中で毛筆指導をすることになった。
 学習指導要領(試案)にある「書き方」の目標は次のように述べられている。

 書きかたは、鉛筆とペンと毛筆で、文字(ひらがな・かたかな・漢字・ローマ字)を書く技能を習得し、日常の生活で文字表現をする場合にことかかないようにする学習である。書く技能とは、文字を正しく美しく書くことであり、読みやすく美しく書くことである。しかも、これらの文字は、いたずらに時間を長くかけることではなく、できるだけ早く書きあげることが望ましい。したがって書き方学習は、読み方今作文といっしょになって行われるものである。

 戦後の学習指導要領はたびたび改訂されているが、以下、小、中学校の書写指導に関する要点について述べる。
 昭和二六年版の学習指導要領の改訂によって、小学校でも毛筆習字の指導が、第四学年以上で選択として履習させることができるようになった。同三三年版小学校学習指導要領では、毛筆習字も硬筆書き方も、「国語科書くこと 書写」と学習領域を明示、同じく告示された中学校学習指導要領でも、従来の「習字」の名称をやめて「書写」と明示された。なお、同年、文部省から出された「筆順指導の手びき」は、当時の文字教育の状況から当を得たものであった。
 同四三年版小学校学習指導要領では、第三学年以上毛筆書写が必修(各学年年間二〇時間程度計八〇時間)とされ、小、中学校の一貫性が実現し新しい書写教育の時代を迎えた。翌四四年版中学校学習指導要領では、国語科内での指導時数が第一学年では十分の二、第二学年では十分の一程度と明示され、第三学年では適宜、計画的に指導することとなった。さらに同四六年度から小学校において毛筆書写が必修となったが、その学習指導の充実を図るため、文部省が五か年計画で小、中学校教諭(原則として四〇歳未満)を対象とし、毛筆書写の実技講習を全国的に実施した。
 同五二年版小、中学校学習指導要領では、国語科教育の在り方に根本的な改正が行われた。すなわち、指導内容が「表現、理解」の二領域と「言語事項」とに区分され、書写は小学校では「言語事項」の内容で、中学校では「表現」の内容として指導されるようになった。しかし指導目標や内容は、次に掲げる同四三年版小学校学習指導要領における書写指導の方針と変わっていない。

  ① 硬筆による書写の指導は従前どおり、第一学年からすべての学年で行う。
  ② 毛筆による書写の指導は、第三学年から第六学年まで行い、指導時数は各学年二〇時間程度、合計八〇時間程度とする。
  ③ 毛筆による書写の指導は、文字の筆順を正し、字形の正確な認識、整正に文字を書く能力の養成をめざす。
  ④ 書写の指導については、特設時間を設けて指導してもよい。

 以上の基本方針は、現在まで引きつがれ変わっていない。

 高等学校の書道

 昭和二三年から実施された新制高等学校教科課程の特色は、選択教科制と単位制の採用である。その中で、習字は芸能科書道として選択必修に位置づけられた。
 同二六年「高等学校学習指導要領芸能科書道編」(試案)によると、書道は家庭・職業と一括され、その中から二~四単位選択となっている。そして目標として、㋑理解 ㋺技術 ㋩鑑賞 ㊁態度の四項目をあげ、単なる技術の伝達ではなく芸術教育の本質を十分に考え、専門的、創造的な書道教育を目ざしている。
 同三一年には「高等学校学習指導要領芸術科編」が出され、書道は音楽・美術・工芸と並んで芸術科とされた。そして、同三三年「高等学校芸術科書道指導書 理論編」、翌年「同 鑑賞編」が出された。前者は三一年改訂の、第六章「芸術書道」の「理解」面の指導資料とし、後者は「鑑賞」の指導理論や事例について述べられている。
 同三五年「高等学校学習指導要領」の告示により、従来、家庭・職業と一括されて選択となっていた芸術科(音楽・美術・工芸・書道)は、前の二科を切り離して独立させ、書道の内容を、「書道I」(中学校書写の上に、基礎能力を養う)「書道Ⅱ」(臨書、創作で表現力鑑賞力や書の理論を深める)とした。同四五年「高等学校学習指導要領」では、更に「書道Ⅲ」(独創的表現力、鑑賞力、理論の学習を通し芸術文化の理解を深める)を設け、現行の「芸術科書道I・Ⅱ・Ⅲ」と完備され、同五三年「高等学校学習指導要領」では、さきに改正された小・中学校国語科書写の位置づけと関連し、高等学校芸術科書道との一貫性が図られた。