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愛媛県史 教 育(昭和61年3月31日発行)

2 戦後の水産教育(昭和二〇年~同三〇年代)

 県立水産学校

昭和一八年(一九四三)、文部省は「中等学校令」「実業学校規程」を公布し、実業学校の修業年限は
国民学校初等科卒業程度を入学資格とするものは四年、高等科卒業程度のものは三年とした。愛媛県では昭和二〇年(一九四五)、宇和島市の県水産試験場内に愛媛県立水産学校(三年制・甲種実業学校)が設立された。定員は一五〇名とし、教育内容は、公民、地理、歴史、国語、文法、数学(解析・幾何)、物理、化学、生物、英語、美術、音楽、体操、実業科は漁撈、製造、増殖、航海、運用、水産機械、漁船、水産生物、海洋気象、水産法制経済、実習で週時数は全学年三八時間。校舎施設・設備はほとんど県水産試験場との共用であり、水産業界の中堅人物の育成を教育のねらいとした。

 県立水産高等学校

昭和二三年(一九四八)、戦後の学制改革により県立水産学校は県立水産高等学校に変更された。施設としては新たに校舎木造二階建一棟が増築された。教育内容は、漁業科の教科のみが置かれた定員一二〇名、修業年限三か年とされた。科目は、国語、社会、数学、物理、化学、英語、体育、実業科は、漁業、航海、運用、漁船、機械、漁獲物処理、海洋気象、水産生物、水産概説、水産法規、水産経営、実習、選択科目とし、週時数三九時間であった。

 県立宇和島南高等学校水産科課程

昭和二四年(一九四九)、高等学校再編成に伴い、水産高等学校は宇和島第二高等学校、鶴島高等学校と統合され、総合制の県立宇和島南高等学校水産科課程となる。教育内容は、便宜上漁業科、製造科、増殖科の三科(コIス)にわけられた。この三コースのほかに、女子生徒のために水産家庭コースが置かれたが、昭和三一年(一九五六)県立宇和島水産高等学校への独立と同時に普通科に編入廃止となる。各コースの実業科科目は、漁業科コースは「水産一般、水産生物、海洋・気象、漁業、航海・運用、漁船、水産法制」、製造科コースは「水産一般、水産生物、水産製造、水産化学、微生物、水産機械」、増殖科コースは「水産一般、水産生物、海洋・気象、水産化学、水産増殖、水産病理、水産法制」、水産家庭コースは水産科目と家庭科目と以って実業科目三〇単位以上とされ「水産生物、水産製造、水産増殖」とし、実習は水産に関する教科の総時数の四割以上実施とした。実習は、総トン数五t及び二・五tの小型実習船の外は県水産試験場の施設・設備を借用、その他業界の現場実習によって実施し、卒業後社会に出て直ちに実務にたずさわり、将来水産業界の中堅人物となる人材の育成を目標とした。

 県立宇和島水産高等学校

昭和三一年(一九五六)、県立宇和島南高等学校水産科課程から独立した。翌年、漁業科・製造科・水産増殖科の三課程(各定員三〇名)が設置された。同三四年、各科の定員が増加し漁業科・製造科各一〇五名、増殖科六〇名に変更となった。施設として、同三二年、大型実習船愛媛丸(総トン数二一四・五一t、四五〇馬力、定員四〇名)竣工。同三四年、漁業実習室が竣工した。同三七年、漁業専攻科(定員二〇名、修業年限二か年)を国家試験による海技免状取得と大型船舶職員養成のため、また同三八年、機関科(定員一〇五名)を船舶機関部員の需要急増と高校生急増対策として設置された。同三九年、機関科実習工場及び第一教棟が竣工した。
 昭和三一年度改訂の高等学校学習指導要領水産科編に基づき、同三二年度の水産科の科目構成について、漁業科は「水産一般、水産生物、海洋・気象、漁業、漁船、航海、運用、海事法規、水産法規、冷蔵・冷凍、実習、乗船実習」となり、製造科は「水産一般、水産生物、水産製造、水産化学、水産微生物、冷蔵・冷凍、水産簿記、実習」となり、増殖科は「水産一般、水産生物、海洋・気象、水産法規、水産化学、冷蔵・冷凍、水産増殖、水産病理、水産資源、水産簿記、実習」となった。そして、科目名は昭和三七年度まで変更されなかった。漁業専攻科は、一学年から二学年の七月言言乗船実習をし、その後「英語、海洋・気象、航海、航海計器、運用、海事法規、舶用電気」の科目合計三〇単位を修得することとした。現在科目「航海、航海計器」を統合して「航海・計器」、「運用」を「漁船運用」、「舶用電気」を「船用電機」に変更し、船舶衛生管理者の資格取得のため、「船舶衛生」が加えられた。次に、昭和三五年改訂の高等学校学習指導要領(水産)により(昭和三八年度より実施)、漁業科は、今までの「航海」を細分して「航海」と「航海計器」とし、また必要により「漁船機関」と「船用電機」を加えることになっている。製造科は、「ボイラ」、「機械電気」と新設科目「水産製法規」を加え、また増殖科は、新設科目「水産土木」を加え、「水産病理」と「水産資源」が廃止科目となった。「実習」を「海洋実習」と「総合実習」、「乗船実習」を「漁業乗船実習、機関乗船実習」とした。機関科は「水産一般、漁船、海事法規、漁船機関、機関設計工作、船用電機、海洋実習、機関乗船実習」とした。

 水産教育の特性と成果

水産科教育の中心は実験実習であり、昭和三二年、水産教育に必要な待望の大型実習船「愛媛丸」が建造された。当時の水産業は生活に必要な動物性蛋白栄養源供給の重要な産業として遠洋漁業発展の時代であった。「愛媛丸」は昭和四四年(一九六九)廃船となるまで、漁業科・機関科・漁業専攻科の生徒を乗船させ、太平洋のハワイ方面やさんご海方面に四四航海(年四航海)、他に二航海を加え、航海距離約四〇万カイリ(地球を約二〇周)の航跡を残し、専門的な知識・技術のみならず将来水産業者として、また船舶職員として必要な能力と態度の育成に多大の貢献をした。更に、県水産試験場の移転による施設移管その他施設・設備も逐次整備されて地域で盛んな真珠養殖の実習や水産加工の実習等も実施し教育の成果も向上した。従って企業からの求人も多くなり、卒業生の就職もよく職場も固定し、独立当時より入学志願者数も常に定員を越した。