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愛媛県史 教 育(昭和61年3月31日発行)

5 視聴覚ライブラリー・図書館・博物館の整備

ナトコ時代

終戦を契機に過去の蓄積を精算し、再出発したものに視聴覚教育がある。本県では戦時中利用していた視聴覚教材のうち、県費で購入していた35ミリ・16ミリフィルム約一五〇本は、県庁各課の重要書類と共に、我方の手で破棄処分された。また大日本映画教育会愛媛支部(昭和一八年愛媛県視覚協会と改称)所有のサイレント16ミリフィルム約百十数本も米軍に接収された。終戦と共に、それまで苦心して集めていた視聴覚教材はゼロの状態となったのである。
 それに代わって、「戦時中世界の状勢を知ることを阻まれていた我が国民に対し国際情勢に対する啓蒙と日本の民主化を促進する」という意図で、昭和二三年連合軍総司令部が軍用16ミリナトコ映画機一、二六九台とこれに付属するスクリーン、およびCIE(民間情報教育局)映画・幻燈機七〇二台、レコードプレーヤ四八台を日本政府に貸付してきた。それに伴って、文部省が同年一〇月「連合軍総司令部貸出の一六ミリ発声映写機及び映画の受け入れについて」の次官通牒を出してきた。それは、都道府県教育委員会が運営の主体となりながらも、地区軍政部の監督のもとに、CIE映画を全国津々浦々まで上映するようにと要請したものである。
 本県でも同二三年にナトコ映写機二〇台・スクリーン一九枚・CIE映画二本等が貸与され、それらの貸与とあっせんを行うフィルム・ライブラリー(二四年一二月、視聴覚ライブラリーに改称)が同年一〇月二六日に県庁の小室に設けられた。発足当時の定員は、視聴覚係主事三・技師二・雇一・運転手一で、本課に主事二、ライブラリーに主事以下五名の配置といった、思い切った人事が整えられていた。
 これらの映写機等を受け入れる機構として、郡市視聴覚教育委員会が組織され、そこが中心となって同年一二月五日から管内移動映写を一斉に開始していった。この移動映写に対するCIE映画の配給日程は、同一町村において四か月三回、同一市において四か月六週間とされた。他方ライブラリー自体も直轄映写班を編成し、民事部の指示、外部からの申請、ライブラリーの計画のもとに、随時全県下で映写会を実施していった。直轄映写班たる僻地巡回映写会は年三・四回行われていた。このことによって、農山村にも映画は広く浸透していった。
 同二三年一二月から二四年七月までのCIE映画一種につき受領から返還(貸与標準期六か月)までの上映数及び観覧者数は、最低一回、二〇人。最高二天回、五万五、〇〇〇人で、普通一〇〇回、三~四万人前後の観覧者であった。

県視聴覚教育協会設立

ところで、講和条約発効によって貸与機材は文部省に移管され、CIE映画は新しく日米文化交流の資材としてUSIS映画と改められ、ナトコ映写機の使用と、フィルムの選択が自由に行われるようになった。昭和二八年は視聴覚教育にとって新しい時代の幕開けであった。同三四年度には県視聴覚教育委員会と県視聴覚ライブラリー協議会を発展的に解消し、新たに県視聴覚教育協議会を発足させた。そして昭和三五年には県視聴覚教育の機構は図3ー1のように整備され、以後地区視聴覚ライブラリーの育成、公民館の総合的な視聴覚教具の整備等をめざして、また社会教育における視聴覚教材の位置づけ、利用法等の研究を重ねながら、新しい段階に入っていった。
 また同年県視聴覚ライブラリー活動の振興五か年計画も立てられた。同三五年度には教材フィルム・スライド等の集中管理、地方映画祭の開催、視聴覚教育団体の指導連絡、AVE用自動車購入、同三六年度にはフィルム使用料徴収の廃止、研修会・講習会・協議会の開催、郡市AVE団体の育成強化、オート・スライド幻灯機・ラジオ・テレビの整備充実、同三七年度には県視聴覚教育協議会の組織改善、町村AVE団体の育成強化、カメラ・引伸機・複写機・生フィルムの整備充実、同三八年度には地域AVL・郡市町立AVE団体との連絡、AVEモデル町村の設置、地域AVLの設置、16ミリ・8ミリ撮影機並びに映写機・生フィルムの整備充実、同三九年度にはA級中央AVLとしての運営確立、教材用フィルム・スライドの自作、郡市AVLの設置、現像室・試写室の設備等を行なうというものであった。以後、この計画に従って県視聴覚ライブラリーの充実発展が漸次はかられていったのである。

図書館の整備充実

昭和二四年の「社会教育法」の第五条第九条によって公立図書館の設置が促進されたが、当時県内には公私立合わせて、次の二一館が設置されていた。翌二五年に「図書館法」が公布され、これに基づき県内の市町村立図書館は、それぞれ図書館設置条例を作成し組織を整備した。同二五年一一月段階での図書館法に基づく公立図書館は、県立・新居浜・今治明徳・松山三津浜・八幡浜・宇和島(同二五年一一月新築開館)・角野・小松温芳・宇和町・吉田町図書館となった。以後他の地域にも図書館の設置が進められてきている。県立図書館による貸出巡回文庫活動の活発化を通して、図書館活動の推進が図られてきている。

博物館の設置

昭和二六年一二月に「博物館法」が制定されたが、本県の場合、県立図書館付属博物館が開館したのは三四年四月になってからである。そして同三六年一〇月に県立博物館として独立し、博物館法による登録博物館となった。しかし、例えば東予には、同二八年に開設され、同三四年に博物館相当施設としての指定を受けた西条市郷土博物館、中予には、二九年開設、翌年博物館相当施設としての指定を受けた愛媛県郷土芸術館、南予には、二五年に発足した大洲城山郷土館等があり、ユニークな博物館経営が行われている。以後、それぞれの博物館の内容充実と共に、例えば松山市に設置された子規記念博物館のような全国有数の博物館が設置されつつある。

図3-1 愛媛県AVE機工

図3-1 愛媛県AVE機工


表3-16 公私立図書館一覧表(昭和二四年一二月一日現在)

表3-16 公私立図書館一覧表(昭和二四年一二月一日現在)


図3-17 愛媛県における博物館

図3-17 愛媛県における博物館