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愛媛県史 芸術・文化財(昭和61年1月31日発行)

一  はじめに

 仏寺において阿弥陀如来の両側に観音、勢至の二菩薩をおき、三尊像一具として安置する形式は最も普通にみられるところである。この場合、観音と勢至は弥陀に対するいわゆる補処の菩薩であり、三者の間に密接不離な教理的関連のあることはいうまでもない。ところが、この三尊にさらに地蔵、龍樹の両菩薩像を加えて、弥陀を中心とする五尊像を配置する形式がある。藤原時代の文献をひもとけば、当時の仏堂にこのような五尊像を安置した実例を拾うことは困難でないが、現在その遺品を求めようとすると、なかなか容易でない。もっともそういうのは彫像の場合であって、絵画においてこれをさがせば、若干をあげることはできる。ここに紹介しようとする像は、そのように極めて珍しい阿弥陀五尊の彫刻として注目に値するものであり、しかも美術的にみてすぐれた作域を示しているのもうれしいことである。