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伊予市誌

二、祝いごと・祈願などの歌

 亥の子歌
 亥の子は商売繁盛や、家族の健康を願って、子どもたちが、各家の門先をまわって、搗き歩くなつかしい行事で、そのときに歌われる歌である。
 一 稲の中の小ぼうず 稲一わやろか おら市はたてん 町の人こそ市たてまわる
 二 二わもやろか おら荷はもたん 牛や馬こそ 荷をもちまわる
 三 三わもやろか おら棹さげん 飼差ならこそ 棹さげまわる
 四 四わもやろか おらししは打たん 猟師すりゃこそ しし打ちまわる
 五 五わもやろか おら碁はうたん ええしならこそ 碁うちまわる
 六 六わもやろか おらろは押さん 船の船頭さん ろを押しまわる
 七 七わもやろか おら質はおかん 貧乏すりゃこそ 質おきまわる
 八 八わもやろか おら鉢はつかん 寺のぼんさんこそ 鉢つきまわる
 九 九わもやろか おら鍬もたん 百姓すりゃこそ 鍬さげまわる
 十 十ぱもやろか おらじはもたん おごろならこそ じをもちまわる

○OOさんに嫁とって、お祝いやれやれ、世帯が上がるぞ、銀の銚子に金さかずきよ、飲めや大黒、歌うは恵美須、中でしゃくとる弁天さんよ、繁盛せ!繁盛せ! (上野地区)
○いの子いの子こいさのいの子 いわわんものは おにかじゃか つののはえた子うめ えんやらえいと えいとや よいしょよいしょ よいしょよいしょ
○おいのこさんというひとは 一に俵ふまえて 二でにっこりわろて 三で酒つくって 四つ世の中よいように 五ついつものごとくなり 六つ無病そくさいに 七つなにごとないように 八つやしきをひろめたて 九つこぐらをたでならべ 十でとうとうおさめた
 また、亥の子歌は、農家の子どもの行事で豊穣を祝うために歌われた。
○亥の子亥の子 亥の子餅ついて 祝わん者は 鬼にか蛇か 角の生えた子生め おいべっさんという人は一で俵をふしまえて 二でにっこり笑うて 三で酒造って 四つ世の中よいように 五ついつもの如くなり 六つ無病息災に 七つなにごとないように 八つ屋敷を建て広め 九つ小蔵を建てならべ 十でとうとうおさまった 繁昌せえ繁昌せえ (中村地区)

 雨乞い歌
 一八五一 (嘉永四)年から一八五八(安政五)年までの「村諸日記」(市場佐伯家蔵)には、毎年の行事のように雨乞い踊りをしていることが記載されている。一八五三(嘉永六)年の日記の七月には次のように記されている。
 七月三日 祇園社において村中雨乞いを致し候、
 同 五日 稲荷神社においてご祈祷一昼夜上躰(藩主)より仰せつけられ候、早朝より相願申し候皆皆差支これなきに付昼夜相祈申候、
 同一二日 朝六つより夕六つ時まで灘町浜御番所下にて千人踊りいたし候、御郡代御代官双方その外庄屋中相祈申し候、夕刻御双方へ御礼にまかり出で申し候、下(下屋敷)より二斗五升御酒下しおかれ候
 この年は大干ばつで、一六日に庚申堂で、二一日からは三夜三日の雨乞い祈祷を稲荷神社で、二四日は稲荷神社で雨乞い踊り、二九日には、村人全員雨乞い踊りをした。この日大洲新谷藩から来て谷上山で三夜三日の間雨乞い祈祷をした。この年は大凶作であった。
 このように雨乞いの行事はたいへんなことであった。郡中へ集まっての千人踊りには各町村からやって来て、次に掲げるような雨乞いの歌を歌った。なお、この雨乞いの千人踊りは一九三四(昭和九)年が最後で、その後は行われなかった。
○東西南北よ 波おだやかに ヤレおだやかに ソコエーソレエ はらい清めて 奉る エイエイエイヤートエーイ
○雨は降れ降れ 千百日も 水は出てこい 川八合
○東横山 照る手の姫は 今は世に落ち 茶屋つとめ
○竹の切り株に たまりた水は すまず にごらず 出ず入らず
○私しゃあなたに ほれたじゃないが 此処は石橋 お手を引く
○泣く子背に負い 松原行けば 松の露やら 涙やら
○西へ西へと お月さんも星も さぞや東は 淋しかろ
○姉というたに 妹をくれた 妹ふり袖 なおよかろ
○妹振り袖 よいこたよいが 世帯さすには 姉がよい
○道中雲助 花ならつぼみ 今日も酒酒 明日も酒
○千寿万歳 思い事かのた 末は鶴亀 五葉の松 (上野)
○できたできてきたよ 大谷池が ソコーソレ 千代に八千代に たから池 ヱイヱイエーイ ヤートヱイ
○池の恵みに 頭を下げる 実る稲穂は 黄金色
○雨乞踊りの 昔を思や 池の恵みが 身にしみる
○眺めよいとこ 大谷池は 伊予の小富士が 眼の下に
○池の水さえ作った人はつきぬいさをのたたえすむ
○稲は黄金の色気をまして踊る乙女の晴れ姿
○ひびく太鼓に 稲穂がゆれる 平和楽土の 風が吹く
○だきつだかれつ 大谷池は 千歳契りて 山と水
○千秋万世 つきせぬめぐみ 伊予市大谷 池の水
○春はさくらで 大谷池は 一日千両の 花の海 (南伊予)
○わたしゃ谷の水 出るこた出たが 岩にせかれて 落ちて来る ヤットコセー ヨーイヤナ ヨイトコセ
○雨を下されや 竜たつ様よ ヨイトコセー 雨をくだされ 五穀が実る アラヤットコセー ヨーイヤナ ヨイトセー
○踊り踊るなァら 三十までおどれ 三十すぎたら 子が踊る
○雨よ降れ降れ 千百日も 水も出てこい川八合
○そろたそろたよ 踊り子そろた アラ ヤットコセー ヨーイヤナ ヨイトセ
○雨も降れ降れ十日に一度 加わいい主さんの肩休め (上吾川)
○雨をくだされや明神さまよ ドッコイセー 雨をもらわねば 百姓やが困る ヤットコセーヨーイヤナ ドッコイセー