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伊予市誌

三、土壌の概要

 人々がその土地に定住し生活するには、各種の条件因子がこれを規制し、また支配してやる。市内各地の土壌がその場所の母岩の風化物であるか、また、運搬堆積されてできたものであるか、その成因は一様でない。そうしてその土地が杉の適地であるか、松の適地であるか、びわの適地であるか、梨の適地であるか、そ菜栽培の適地であるか、それぞれの土地の人は経験の上からよく順応し利用してきた。

 緑色片岩地域 
 唐川筋の森川以南の土地は、雲母安山岩の風化した土壌もあるが、大部分は緑色片岩の風化した礫質壌土でこれを化学分析してみるとわかるように地力は高く、そして保水力も高いので、杉・桧などの針葉樹や、くぬぎ・しい等の闊葉樹の植林事業に適する地域である。名産唐川びわもこの地域に適する果樹である。この地域での水稲耕作は分けつも少ないし、粒ばりや実いりが悪かったりするが、畑作物の生育はよいといわれている。

 久万層群地域 
 両沢・鵜崎あたりは、久万層群といわれる堆積岩の風化した土壌、礫質壌土であまり地力はない。障子山の山頂は凝灰岩の風化した俗に音地といわれる土地で、有機質に欠けたやせ地である。雨後は土が足にねばりつく土質であるが、ひのきなどの植林がされている。

 和泉砂岩地域 
 和泉砂岩の風化によってできている土地は、郡中断層と高野川断層との間の森・三秋あたりの地域並びに中央構造線と伊予断層との間の唐川・向井原以東の山地及び山麓扇状地の地域である。
 この和泉砂岩の風化によってできている土地は、伊予市の面積の六五%を占めている。この土地は地力があまり高くはない。保水力は片岩系の土壌より低く、細粒土は粘着力が強い。そのために昔から松が植林され、杉・桧などは谷間の湿潤地に限られた。保水性の乏しいことは甘度を高めるので、蜜柑栽培には好適とされている。しかし、夏期には適度の降水量が必要であるので、唐川では国の助成金で用水池をつくり人工かん水の施設をしたり、上野から市場にかけては笠方ダム用水路によるかん水施設などをして土壌の欠点を補っている。伊予市の水田は大部分和泉砂岩の細粒土で地力は高くないが、水稲耕作・そ菜類の裏作・ビニールハウス栽培など高度経営の場となっている。
 洪積台地は重粘土質の半固結層で保水性が高く地力は低い。台地をなしているので綿・甘しょなどの栽培地であったが、かんがい工事によって今はほとんど水田として利用されている。

 海成沖積層 
 下吾川の海成沖積地の微高地は、砂土で非常に保水力が低く、蒸発性が高いので、耕作には適しなかった。地下水が高いためかん水用の井戸を各所につくり、朝夕汲みあげてかん水路を通し耕作せねばならぬので、非常な労力を費した。しかし、太陽輻射熱によって地熱が他の土質より高くなり、昔から春物野菜などの早期出荷ができるので、そ菜栽培地として収益をあげることができた。今は昔の苦しいかん水作業は電力による汲み上げかん水にかわり、耕作の労苦は昔日のようではない。