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伊予市誌

7 谷上山の植物

 谷上山は郡中駅から南東約四㎞の地点にあって、山頂には宝珠寺がある。鐘つき堂から山門をくぐると、本堂まで樹齢幾百年という大杉が立ち並び、静けさの中に山の情緒を味わうことができる。(しかしこれらのスギの巨樹のうち数本が伐採されたのは残念である。)
 この付近の植物は、マツ・アラカシ等を主とした極めて単純な植物相を示している。山道の両側には、アカマツ・クロマツ・アラカシのほかにネジキ・ヤシャブシ・ヒメヤシャブシなどが多く見られ、暖地の向陽斜面としての特徴を示している。またそれらの間には、シャシャンボ・トベラ・ヤマモモ・ナワシログミ・ヒサカキ・ヤブツバキなどが見られ、潮風の影響を受ける海岸地方の植生の特徴も示している。シダ類にも暖地性海岸のものが多く生育する。イノモトソウ・シシガシラ・ゼンマイ・べニシダ・ホシダ・カナワラビ・ジュウモンジシダ・オニヤブソテツ・ゲジゲジシダなどが見られる。植物分布上めずらしいものとしては、暖地性のオオフユイチゴ・サンゴジュ・サツマスゲ・ヒカゲワラビ・アマクサシダ・オオバハチジョウシダなどがある。比較的低温地性のものとして、この場所でめずらしいものは、キヨタキシダ・ツヤナシイノデ・トウゴクシダ・ミヤマクマワラビ・クマガイソウなどがある(『愛媛の自然』一九六一年第三号、松田修著-一部改変、加筆)。
 これらの植物のうちアカマツ、クロマツはここでもマツザイセンチュウの大きな被害を受けているが、尾根道付近などには回復しつつある状況も見られる。クマガイソウは、庫裡の裏手の竹やぶの中で昭和三五年八月に確認されたが、その後は見られなかった。
 谷上山の植物については、港南中学校科学部が一九五九(昭和三四)年から採集に回を重ね、植物目録をつくっている。それによると、羊歯植物が七科で六四種、種子植物のうち裸子植物が六科で九種、被子植物中の双子葉類は八八科で三〇九種、単子葉類は八科五〇種が見られる。このほかにもまだ未確認のものや不確実なものもあると思われるが、暖帯の沿岸であるため種類は多いということがわかる。
 前述のようにこの谷上山は、伊予市の観光地となっている。一九七四(昭和四九)年三月、市の産業課と港南中学校理科部で協力して、展望台付近と山門から本堂までの道の両側の主な植物を調査して名札をつけた。ごく限られたものであるが参考のためにその目録を記載しておく。

アカネ科     ヘクソカズラ
ウコギ科     カクレミノ
カエデ科     イロハカエデ
カバノキ科    ヤシャブシ・ヒメヤシャブシ
キョウチクトウ科 テイカカズラ
クスノキ科    シロダモ・アオガシ
クマツヅラ科   ムラサキシキブ
スイカズラ科   ニワトコ
ツツジ科     ネジキ・ヤマツツジ・ミツバツツジ・シャシャンボ・アセビ
ツバキ科     チャ・ヒサカキ・ヤブツバキ・サザンカ
トウダイグサ科  アカメガシワ
トベラ科     トベラ
ニレ科      エノキ・ハルニレ
ブナ科      アラカシ・ツブラジイ・コナラ
マキ科      イヌマキ
マメ科      ナツフジ・ヤマハギ
モクレン科    モクレン・ビナンカズラ
モチノキ科    ソヨゴ
ヤマモモ科    ヤマモモ
ヤブコウジ科   ヤブコウジ・イズセンリョウ
ヤマモガシ科   ヤマモガシ
ウラジロ科    ウラジロ
ウラボシ科    イノモトソウ・クマワラビ・コシダ・ミゾシダ・ベニシダ・フモトシダ
ゼンマイ科    ゼンマイ